感染系怪異調査書

赤井積希

調査書1


発生地域:東北地方



発端と思われる事象

以下、当時の新聞記事。


16歳少女行方不明、一年後に遺体発見


1986年11月、山奥の村で16歳の少女・伊納優希さんが行方不明となり、約一年後の1986年12月に遺体が発見されました。伊納さんの遺体は衣服を身に着けておらず、性的暴行の痕跡が確認されました。死後3日とされ、手足の傷から監禁されていた可能性があります。


遺体発見から一週間後、近隣に住む無職の男・田神屋守容疑者(48)が逮捕されました。田神屋容疑者は犯行を認めましたが、逮捕から三日後に留置所内で自ら首を掻き切り、死亡が確認されました。


取り調べ中、田神屋容疑者は「全てあの子が悪い。あの子に殺される」と漏らしており、死亡前夜には「『あの子が俺を殺しに来た』」との発言もあったことが明らかになっています。


この事件は村内外で衝撃をもって受け止められ、未解決の闇を残したままとなっています。警察は引き続き、事件の背景について捜査を進めています。



怪談の内容

「いのうさん」という怪談名で広まっている。


夕暮れ時、ひとりで歩いていると、黒髪のストレートヘアをした女子高生のような少女が近づいてくる。その少女は真っ黒なセーラー服を身にまとい、細い目でじっとこちらを見つめている。


「私のお家、知らない?」と、彼女は静かに問いかけてくる。


「知っている」と答えれば、彼女は期待に満ちた瞳で案内を求めてくる。その案内を間違えてしまえば、自分も帰れなくなり、「いのうさん」と彷徨うことになる。


逆に、「知らない」と答えると、彼女の顔に狂気が浮かび、悲しみに狂った「いのうさん」が襲いかかってくる。逃げる間もなく、命を落とすといわれている。


いのうさんはこの話を知った者の元を訪れる。


この怪談には、唯一の対処法がある。


それは、「たがみやの家なら知ってる」と答えること。いのうさんはその名前を聞いただけで、恐れおののき、逃げるように姿を消してまう。



噂の遷移の考察

元は、地域の大人たちの間で伊能優希さんを憐れむような形で事件概要が広まっていたと考えられる。

だが月日が経つにつれて事件概要が広がることもなくなり、伊能優希、行方不明、田神屋という単語が残り怪談へと遷移していったと考えられる。



メモ

オーソドックスな怪談に分類される。

同じ分類としては、感染するということを除き口裂け女等が該当する。

また、子供を早く家に帰させるような教訓的な意味合いを持つとも考えられる。

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