あの夏の日の記憶

山城沙綾

第1話 予感

夏の暑い日でした。


結愛(ゆあ)は、中学2年生。

普段から、引っ込み思案で自己主張ができず、周りに流されて生きている。

本当のしたいことがあっても相手に合わせることが得意な子。

周りからすれば都合のいい子だよなと。

ハイハイってなんでも聞いて合わせてくれる。

それが普通なんだから。


何故そこまで流されるのか?

結愛自身が周りに嫌われたくないからだ。

昨今の現実ではいじめが多発している。

いじめてるつもりがなかったと言っても、いじめられてるとされている方が感じればいじめなのだから。

それは、学校だけでなく社会においてもそう言えるだろう。


話を戻そう。

結愛は学校内で上手くやるために流されては自分のことをないがしろにし続けている。

それだけでなく、家でも同じなのだ。

家族関係は、核家族世帯。

父は九州男児。

母は関東生まれ関東育ち。

頑固者の父親に振り回される母と娘と言ったところだろうか。

父の言うことは絶対なこともあり、自分の意見は言うことは不可能で、父の思う形のものしか許されなかった。

自分の考えることは全てあっていないまであるかもしれないと思っていた。

そうなるとひとつの救いは友達から嫌われないこと、親からも嫌われないこと

そうだとすると従うしかないのも明白であった。

なぜなら、それが安心するから。


「結愛〜こっち来てよ〜」

友達の優希(ゆうき)が呼ぶ。

現実の友達の中で今、仲のいい友達である。

結愛「なーに?」

優希「いや、なんとなくプリクラ撮りたくて呼んだ」

結愛「あー、いいよ」

優希「やった!ありがとう!」

優希「にしても暑いよねマジでベッタベタ」

結愛「そうだね〜」


夏の暑い日なこともあり制服が張り付くくらいの汗まみれ。

気温が頭のおかしいくらいに高いせいもある。

連日40℃を記録していると報道されるほどだ。


優希「ついたーすっずしっ」

結愛「ほんとだーすずしー」


プリクラのために少し大きいショッピングモールのようなところに着いて歩きながら涼んでいる2人。

結愛にとってこの放課後のたわいもないやりとりと、することが生きがいでもあった。


その傍ら、結愛は家の事、学校のクラスメイトからの仕打ちなど考えていた。


結愛「はぁ。」

優希「どうしたの?」

結愛「まぁ悩み事。」

優希「そっかぁ。」


優希だけには何故か意思疎通できることがあったのだろう。

はたまた、聞き上手なのか。

まだ分からないのが事実だ。


優希「ま、とりま何でとるー?」

結愛「うち決めきらんから優希決めてよ」

優希「んー、そんじゃこれにしよー」

結愛「おっけー」


そうしてプリクラを撮る2人。

落書きはそこまでせずシンプルに。


結愛「シンプルだと顔が映えるよね」

優希「そうだね〜」

結愛「んね〜」


普段通りの会話。

普通の学生生活。

その傍ら、しんどさを隠す日々。

結愛にとっては普通だけど、どこか無理してるんだろうなんて。

知る由もない。

ただ、結愛の体は着実と蝕まれていた。

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あの夏の日の記憶 山城沙綾 @saaya_yamashiro

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