黄金の群像

奥行

黄金の群像


「流石、王様!!王様万歳!!」

「王様万歳!!!」


豪奢な宮殿の玉座に座る

豪奢な衣服を身に纏う

豪奢な王様がおりました


「王様万歳!!」

「王様は素晴らしい!!」

「絢爛たる王様!!」

「類稀なる荘厳な王様!!」

「親愛なる王様!!!」


色とりどりの鳥が舞い

蝶が紙が花が布が舞い

色とりどりの女が舞い

金が舞い賛辞が舞い

豪奢な王様は大変ご機嫌でありました


王様万歳!!王様万歳!!王様!!王様!!


「王様は素晴らしい!言葉にならない程、素晴らしい!」


1人の青年が声を上げますと

黒い仮面の側近が言いました


「言葉にならないと申したか、不敬である」

「殺せ」


群衆から草のように引っこ抜かれた青年は

側近の一声によって取り押さえられ

王様の前へと連れられました


「死にたくありません!!」

「死にたくありません!!」

「死にたくありません!!」


鳥は歌い 花は舞い 布は踊り

澄んだ空気に鐘の音が響き

いずれかも知れずいずこまでも

美しい音色が聞こえておりました


青年は押さえつけられ 膝をつき

もがきながらも顔を上げました

そこには豪奢な豪奢な王様がおり

黄金に輝く盃に毒を注がせて

青年の口へと逆さまにひっくり返されました


青年は苦しみ のたうち回り

血を吐き 爪を剥ぎ 腹を掻き

命乞いを叫び 地面を這い

唇を震わせ 瞼を震わせ 眼球を震わせ

脚を曲げ 腕を曲げ 首を曲げ

濁った息を吐き 吸い 吐き

背中を反らせては 額に青筋を立て

赤くなり青くなり白くなり

色とりどりのたうち回り

舞い 踊り 歌い 響き渡り

蝶が紙が花が布が舞い

色とりどりの女が舞い

鳥は歌い 花は舞い 布は踊り

澄んだ空気に鐘の音が響き

響き 響き 響き 響き渡り

いずれかも知れずいずこまでも

美しい音色が聞こえておりました頃に

青年はこう思いました


(あぁ良かった!)

(死ぬのは嘘なんだ!)

(だってもう苦しくない!)



豪奢な王様は大変ご機嫌でありました



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黄金の群像 奥行 @okuyuki

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