第33話 強行軍

1日で2度の侵攻戦


かなりの強行軍だが、考えるのが面倒くさくなり無策で突っ込んでいってる訳でもない


1日に1度しかワープを使えないなら

通常の魔王であれば外を眷属とは出歩かない為

敵は今日攻めてくるとは思っておらず、多少は油断している筈だ


それに防御戦やら領地を隣り合わせで睨めっこすると考えた場合

正直こっち側の主力でもある女性陣は俺みたいな

独身ニートって訳でもないのでずっと待機は難しい


もう一つは敵の主力が複数いるという事だ

1体だけでも別動隊で動かれると対抗するのが難しくなり

どんどん敵に領地を削られるだけになってしまう


やるなら軍師だが、残念ながら俺にはそんな頭は無い

ならシンプルに行く方がリスクは少ない筈だ


少なくとも今だけは敵の主力が固まっており、準備も整っていない可能性も高い


敵のダンジョンも侵攻出来るモンスター数が下限の50体で設定されている


大仏、女性陣と俺、ユニークとして作成した巨大グール6体

インプ20体に鉄の鎧と盾、槍と剣で武装したオーガ20体の計50体で攻め込む


グールの足が遅いが「戦いの唄」の身体強化と

侵攻直後の為か敵の数自体が少ない事もあり

それほど時間はかからず最深部までたどり着く事が出来た




最深部のフロアにたどり着くとそこに広がるのは「小江戸川越」とも評される


江戸時代のような入り組んだ古い町並みだった

見通しが悪く敵の姿が見えない為

視覚共有によって敵の姿を捕捉するべくインプを飛ばす


しかしそれを待ち構えていたかのように敵の攻撃が降り注ぎ

インプ達が吹き飛ぶ


幸いにも大仏が盾となりインプ数匹の犠牲で敵の数が把握できた

敵はユニークモンスターであろう鎧武者と仏僧が乗った山車が4体

似合わない金髪姿の男が山車に乗っていたが、あれが魔王だろう


祭でも無いのに山車に乗るなんてどんな気持ちで乗っているのか正直感性を疑う

そして空に浮かぶ大量に浮かぶインプの大群



あれだけ居れば適当にやっても当たるだろう


残鍛迷途ざんたんめいと×ポルタ―ガイスト×一夜の名刀


錬成スキルの向上で「銅の槍」が生み出せるようになり

新スキルの「一夜の名刀」で大幅に上がった火力で

反撃として爆撃を行っていく


更に大仏とオーガを盾にして女性陣は合体魔法を繰り出していく


土魔法×水魔法

泥濘氷床でいねいひょうしょう


地面から複数の泥沼と氷の槍を発生させ、敵の動きを阻害し


火魔法×風魔法

焔槍旋嵐えんそうせんえん

による炎を纏った竜巻の槍が敵に降り注ぐ



敵の攻撃により周囲の建物が崩れて徐々にこちらの移動範囲が増え

耐久力に優れた大仏が盾になる事で攻撃に専念できる


ユニークモンスターに決定打は与えられないものの

敵のインプの数が徐々に減っていった


しかしジリ貧である戦況を覆す事は出来なかった

敵のユニークモンスターの山車の高さと本拠地である地の利を生かし

障害物となる街並みを自由に移動し建物の上から自由に攻撃できる

山車の上に乗る仏僧の魔法と鎧武者の弓にインプの大群による魔法攻撃


敵のインプによる魔法では大仏はほとんどダメージを受けない為

盾にしてやり過ごすが仏僧や鎧武者の攻撃には軽くないダメージが入ってしまう


治癒魔法で大仏を回復しながら徐々に敵のインプを減らしていき


さらに街並みを自由に移動する山車の動きを止めるべく

俺が別働体として動き「善良なる隣人」の糸で網を張ったり

巨大化したグールやオーガを別働体として動かすが


大した効果が無く蹂躙されてしまう




苦しい戦いが続く中、遂に盾となっていた大仏の左半身が大きく欠け

体勢が大きく傾むいていく


敵はこれを好機と見たのかバラけていた陣形から

こちらに向かって集束する動きを見せた


俺はその動きを見て、身体強化を全開にして建物を駆け上がり

敵に向かって槍の爆撃を行い、こちらに注意を向かせる


注意を引いた分、こちらに攻撃が向くが

身体強化で避け、避けきれない物は防御陣を発動してなんとか防ぐ



敵の攻撃をしのぎ、空いた一瞬で俺は「小鬼の頭目」を発動し

大量の竹槍を持ったゴブリンを出現させ、再度投げ槍の雨を降らせる



「一夜の名刀」を発動させた攻撃だったが、大してダメージは無く

反撃によってゴブリン達が消し飛んでいくが

狙いはダメージでは無く、動きを止める事だ


「やれっ!!」


大声で合図を出し、ユキのユニークスキルが発動する



傀儡葬陣くぐつそうじん

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