君への手紙
たちばな かん
思いを綴れば残ってくれる気がして
僕の手紙を受け取ってくれる気がして
体を持って現れてくれる気がして
馬鹿みたいに何度も書いたんだ
君の欠点をまとめて封をして置いてみたんだ
汚いところで覆えば何も見えなくなるって
僕の目には眩しすぎたから隠したんだ
でもどうも布切れが足りないみたいで
風に吹かれては鼻をくすぐり
光が漏れては全てを照らす
箱に閉じ込めては心地よい声が聞こえる
お願いだから嫌いにさせてはくれないか
欠点なんてひとつも無かった
ただ忘れたかったんだ
君が居なければ生きていけない
本当なんだ
どれほど愚かだったかなんて聞かないで
君がいちばん知っているよね
どれほど弱いかなんて試さないで
僕が隠したかった心を解かないで
最期まで罪な人だね
僕なんかを愛しておいて放っていくのか
君は自由すぎるよ
少しくらいは一緒に行こうよ
皮の剥けた荒れた手でも握ってくれるよね
涙を堪えようと筆を握りすぎたみたいだ
酷く滲む景色と封筒だけが残った
君への手紙 たちばな かん @citrus7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます