第2話 両親
姉が俺を着せ替え人形にしてから、時計の針が2.3周したようだった。
部屋の壁掛け時計を確認すると、13時を過ぎている。
身体が変化しているからか、俺の身体はカロリーをよこせと叫んでいるようだ。
飢餓感に苛まれながら、訴えけるように、
「ちょ、姉貴!!もう13時過ぎてるぞ!! 昼飯にしよう昼飯に」
「う~ん。もうちょっと遊びたかったけどな。残念」
「俺の髪を触りながらいうんじゃねえよ」
自分の髪をこれでもかと弄りまわした癖に、まだ足りないとばかりに後頭部にほおずりした。
うえ。気持ちわり。
「もういいだろ。おしまい」
「そう~ね。思ったのだけれど。あんた。お母さん、お父さんに今の状況説明した?」
いやあんたが母さん、父さんに説明する前に自分の部屋に連行したんだろうが。
ゴッシクの服を破れて構わまないほどの力で裾を力いっぱいに姉を振り解く。
俺はお前の所為だよと、じぃーと睨みつけた。
「ちょっとなにその顔。めっちゃ可愛いだけど♡」
姉は体をくねくねしながら、愛おしそうに見つめてくる。
怪訝な表情をしつつ、なんかもう何を言っても無駄そうだ。
あきらめて両親の居所を姉に尋ねる。
「説明してねぇよ。で、母さん、父さんどこ?」
「お父さんは新型カメラの買いに行くと言ってたな。母さんだったら一階で昼飯作ってんじゃない?いつもと変わんないでしょ」
そういえば、父さん。コスプレの撮影とか滅茶苦茶好きだもんな。
うわ。俺の今の格好とか父さんに見つかったら餌食になりそうだ。
見つからんとこ。少しおびえたような表情になりながら、俺たちは母さんのいるリビングへ向かった。
姉がリビングの扉を開けると、醤油ラーメンのいい香りが俺の腹を一層腹を空かせる。
昼飯が作り終わったタイミングで降りてきたらしかった。
母さんがラーメンの一口目を食べようとしていた時、箸をおいてこっちに寄ってきた。
「え。誰それ。なびき!あんたそれ誘拐してきたの!?ちょちょ、なにやってんの!今から前科を作るなんて。お母さん悲しいわ」
「違うよ。じゃ~ん。見てみて。この子新生菊馬だよ」
姉が犯罪を犯したことに震えていた母さんだったが、俺とわかるやいなや、飛びついてきた。
俺の肩をブンブン縦に振るな〜。
ってか新生ってなんだよ。ああ、そうだ。なびきは姉の下の名前な。
「菊馬・・・なの?」
「そうだよ」
「そういえば、菊馬の面影あるわね。菊馬が女性として生まれたのなら、こんな感じだったのかしらね」
母さんは、眉毛を八の形にしてう~んという声ともに悩みが晴れたかのように、ぱちんと手を叩いた。
「詳しいことは、ラーメンを食べながら聞きましょう」
俺もお腹の虫を限界のようだし、ラーメン早く食べたくてたまらなかった。
俺は珍しく母親の意見に賛成した。親子三人テーブルへ着き、ラーメンの麺をすすり始めた。
男の時の箸では今の手にはうまく持つことができなかった。
それを見かねた母さんが子供の時に使っていたもの出してきたのだが、屈辱だ。
蓮華でラーメンのスープを飲もうとすると、熱すぎて舌を火傷しそうになった。
今更だが、この身体ひ弱すぎない?ラーメン食べるだけで一苦労だ。
昼飯もひと段落付き、母さんが水をくいっといっぱい飲んだあと、
「それで、どうしてそんな姿になったの?」
「知らないよ。そんなの。朝起きたらいきなりこうなってたんだ。」
「不思議ねぇ~ それはそうと学校どうしましょうか」
「そうだよ!!学校があるんだよ!」
俺は飲んでいた水をすべて吐き出した。そうだ。明日には学校があるんだった。
というか、神崎さんに知られたくない。まてまて!!
うちのクラス可愛いものに目がないやつらでオンパレードだ。明日までに戻る方法を考えねば。
テーブルをすこし前のめりになりながら、額に雫を垂らして
「明日までに戻る方法あるかな」
「明日までに・・・?戻る? 戻れればそれに越したことはないんだけどね。可能性低そうね」
「息子が女になってもまあいいっちゃいいんだけど。明日朝、学校に電話を入れるとしてなんて言おうかしらね」
いやよくねーよ。というあきらめないでよ。なにかあるかもでしょ。
俺はすこし泣きそうになりながら、テーブルをばしばし叩いた。
そんな中、姉貴がパソコンをこちらへ向けてきた。姉に静かだな思っていたのだが、なんか調べていたのか。
「あんたこれに罹ったんじゃない?」
「うーんどれどれ」
パソコンの画面には、
【思春期における突発的性転換事象の事例報告】2023・12/3 作成者 田中広
概要
近年、極めて稀な事象として、思春期の若年者において突発的な性転換が報告されている。本研究は、14〜18歳の思春期に限って観察されるこの現象について、既存文献および少数報告事例をもとに整理し、仮説的なメカニズムの可能性を検討する。性転換は一度発生すると固定化され、再度の変異は確認されていない。
1. 背景
性別は通常、出生時に決定される生物学的特徴と社会的認識の総合で形成されるかし、世界で数件のみ報告されている突発的性転換事例は........
え?なにこれ、一文字も理解できなかったぞ。
つまり、突発的性転換事象?なんだそれ?俺は足りない脳みそで恐ろしい文章を見つけてしまった。
「まってまって、一度発生すると固定化される?うそでしょ!!もう俺男に戻れないの?」
「がち泣きしてる。菊馬。なんか身体に精神が引っ張られてない?」
涙があふれてきて止まらない。手がもう水浸しだ。俺だって心の準備くらいしておきたい。
「突発的性転換症候群ねー この事例報告書だけじゃなにもわからないわね。明日学校お休みして病院行きましょうか。この報告書少し古いわね。新しいのないの?」
「探したんだけどね。研究している人が少ないんだよね。ネットでこの報告書しかなったんだよね」
母さんと姉貴が報告書について、談義していると玄関のドアから年増の男性の声が聞こえてくる。
その声はるんるんで、欲しいものが買えた時に出す、父親のものだった。
「ただいま!!みてよ母さん!!ようやく買えたんだよ!!このカメラでコスプレ下美少女たちを撮り巻くるんだ!!もちろん母さんもなびきも菊馬もだよ」
「そうね。よかったわね。考えないといけないことがあるから、ちょっと静かにしてて頂戴」
「え。なんか辛辣」
父さんはすこし肩を落として、残念そうにリビングから自分の部屋に戻るとき、泣いている俺の姿を発見した。
驚いた様子でもあり、カメラマンとしてこのゴシックの姿の美少女を撮りたそうにしている。
絶対やだだからな。この姿をなにか残しておくなんて嫌だからな。
彼は静かな声で姉に問いかけていた。
「なびき。このゴシック美少女は誰なの?」
「菊馬だよ。菊馬だよ。今日起きたら、女の子になってんだって。父さん医者でしょ何か知らない?」
「菊馬!?まじか。こんなに可愛くなっちゃって♡」
と実の息子が一夜にして美少女になったことを対し、そこまで重要視していないように見えた。
宮水家は代々医者の家系である。父さんはプライベートではかなりふざける人ではあるが、仕事は真面目にこなす人らしい。
「冗談さておき、一夜にして変わることってありえるのか?
仮にもしこのような現象が起きたとしても、骨格・内臓・血管・皮膚など全身が変化することに耐えれない」
「菊馬は身長も体重も変わっているとすると、臓器のサイズ変わっていると見るのが妥当だ。
大量の細胞死・細胞が生まれ変わることになる。」
急に詠唱し始めた。怖い。
「ホルモン変動も起こっているはずだ。ショック死が起きていないのを考えると、菊馬は何か今の医学では考えらないものを獲得したのでないか?」
だらーと本業の医者らしく医学的な本質に基づいて推察した。
ショック死とか怖いこと言ってる。俺にもわかるように説明しろ。当の変化が起きた俺が置き去りだよー!!
「獲得したってなにが?」
「それは調べてみないことにはわからないさ。
今の言ったことはすべて仮説だからね。ただ、何かしらの免疫反応を獲得したとみていいね。じゃないと菊馬死んでると思うよ」
父さんと母さん・姉貴で例の事例報告を読んでは意見を交換していた。なんだこの家族。
家柄として職業病なんだろうな。俺は呆れたようにその三人の影を見守ってると、
「菊馬。昨日のことについて詳しく聞かせもらってもいいかい?何もないとおもんだけども、菊馬の今後に関わることだから」
「ああ。それとさっきまで泣いていたようだから、ちょっとお風呂にはいっておいで。もしかしたら、感染症を発症しているかもしれないから」
「うん」
俺は素直に返事をして、お風呂のある方向に向かおうとした。
「まって菊馬!!そのゴッシクの美少女の姿をカメラで撮ってもいいかい。一枚だけでいいからさ」
なんだこいつ。さっきまでの俺のこと想ってくれていた父さんの面影が綺麗さっぱり消えていた。
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