第27話 本性
『突然すみません! 俺には好きな人がいます‼』
スピーカー越しから、聞き覚えのある声が轟いた。
「え……国枝さん……? 何、で……?」
状況が全く見えない。たった今あむちゃんからメッセージと動画で綾乃さんの居場所を特定したというのに、一体国枝さんに何が……?
「フフッ……フフフフフフフフフッ……」
最中、矢野さんが凛々しく高らかに笑う。
私は混乱しながらも、ギロリと問うた。
「……貴方、これが分かっていたのかしら?」
「いえ全く。ですが……私の愛しのケー君ならきっとやり遂げると信じていました!」
矢野さんは微笑んで大きく両手を広げ、ギュゥゥゥ……と、その身を包み込む。
己を抱き、愛しの人を連想する矢野さんを見て、私は鼻を鳴らしてぼやる。
「(……フンッ、腹黒妄信もここまで極まれば純愛物かよ)」
「? 今何か言いましたか?」
「いえ? 空耳では? ……それよりも、貴方はここに居続けていいのかしら? きっと彼、ただじゃすまないわよ?」
「ええ、分かっています。花火は……フフッ、来年に持ち越しですね」
不気味に笑って矢野さんは歩み出し、私を通り過ぎる──寸前。
「あ、私の
「っ、ええ勿論。分かっているわ」
「フフッ……では私はお先に」
そう告げて、矢野さんは雑木林に入っていく。
私は咲き誇る花火を前に立ち尽くし、国枝さんの言葉も届かず、ただただ矢野さんに怖気づくことしか出来なかった。
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