第21話

◇ ◇ ◇ ◇




『キミたちの自由は、消えます。意思も、無くなります。それは、この国から、認定されています。』


『なに、言って…こんなの、誘拐、じゃないですか…』


『キミは…12歳か。しっかりしてるね?鬱陶しくらいに。』


『…っ…!!』


『キイチっ!』


『キイチくん…!』


『えーっと…ハヤトくんに、ダイくん、か。2人とも“キイチくん”や“マリちゃん”のように血を出したくないんなら、大人しく話を聞いたほうが賢明だと思うけどー…あ、賢明って分かるキイチくん?そんな風に、お兄さんのことを睨んだりする行為は正反対にあたるんだよ?』


『…キイちゃん…だめ…』


『そうそう。マリちゃんの言う通り。お兄さんに刃向かうことは“だめ”だよ?“許されない”こと、だよ?あ、それからね、』



荷物のように押し込められた4人の子どもたちを乗せた車は、永遠と走った。



月が真上に留まる頃、震えて寄り添う子どもたちを降ろした場所は、深い霧に囲まれた山奥。


上下左右、遠方からでは確認できない隠された屋敷。

隣にある、コンクリートで包まれた異質な倉庫。


暗い、四角形。

逃げられない、箱の中。



サバイバルナイフで抉りとるように額を斬られても尚、幼い3人を守ろうと前に出る男の子の服の裾を、渇いた血が顔中にへばりついている女の子が控えめに掴む。




『キミたちの名前と親族たちも、消えるからね?てかもう、消えた頃か?』




悲惨な現実を引き起こしている大人は、それらの“非力な抵抗”を前にも、とても可笑しそうに、微笑んだ。



鳴り止まない通知音パソコンを片手に、誰かから流れてきているんだろう情報を、前にして。

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