第18話

『…マリ?』


『…ハヤト、』


『どう、した?なんか、あったのか?』


『……どうして?』


『いやべつに…ただ、もう12時すぎて日にち変わってるから』


『え…?』


『…12さいのたんじょう日、おめでとう。』


『……ありがとう、ハヤト。』


『ほんとは、ぴったりに部屋に言いにこようと思ったけど…キイチが入っていくの見えて、今になった。』


『………うん。そっか。』


『…キイチとケンカでもした?』


『…ううん。してない。大丈夫。』


『…じゃあ、そんな“しんきくさい”顔すんなよばーか!せっかくの日なのに…ただでさえ“しけてる”この屋しきがさらに暗くなるぞ!』


『そっか…ごめん、ハヤト。もう遅いのに、ありがとう。うれしい。』


『おう。』











泣きそうに微笑んだ彼女は、今でも簡単に思い浮かべられる。


震える手のひらを隠してでも気丈に振る舞う、

そんな彼女の強さを知ったのは、いつだっただろう。

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