第4話
◇ ◇ ◇ ◇
≪…どうして、彼らは消えたのか。空白の1時間に迫ります。場所は、××県〇〇町。豊かな山々に囲まれたこの場所は―――≫
「ほえ~…生放送生電話で情報求む!ってか。どうせイタズラ電話ぐらいのものしかかってこねえくせによくやるわ」
「…確かに。」
散らばったデスクに肘を付き、職務を完全放棄した先輩を放棄したいところだが、縦社会が基本の現代においては到底無理な試みだった。
それに、普段は同意できる素振りさえ見出だせない相手その感想には、2つ返事で頷ける。滅多にない現状に、薄い笑みが溢れた。
「…おっ!イケメンエリート弁護士、長嶺頼(ナガミネライ)が笑ってやがる。」
「…なんですかそれ」
「お前最近、ニュース番組のコメンテーターとか女性誌とかの“人生お悩み解決コーナー”の“相談者”として引っ張りだこだろ?んで、奥様方に大人気だってテレビでやってたんだよ。畜生この野郎。」
「引くほど見てくださっているようで感謝致します先輩…じゃあ、僕はお先に。」
同業者としてどうなんだと干渉めいた心配を持つほどには、荒い話方を得意とする先輩に苦笑する。
この仕事を10年以上続けている筈の相手は、根が純粋なのかなんなのか、何時どんな時でも素直であるようだ。良くも悪くも。
パソコンを閉じ早々に鞄を手に立ち上がれば「えっもう終わったのかよ!手伝えよ!」と理不尽な申し出をほざく相手に完全無視を決め込んで背中を向ける。
「別件を抱えていますので。また明日。お疲れさまでした。」
「…相も変わらず堅い奴だな…なに、これから仕事かよ」
「ええ、まあ。」
「そうかいそうかい。まあ、無理すんなよ。おつかれさん。」
何だかんだ卑下してしまっている箇所はあれど、嫌いではない優しさをもつ先輩にオフィスを出る間際、振り返り小さく頭を下げた。
「…オダマキ。」
車に乗りハンドルを握って、そっと呟く。
狭い中で呟いたそれは、果たして。
意味を持つことが、できるのだろうか。
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