第2話

「春湖お前、失恋したんだって?おつ。」


「滅びろ鈴木」





購買で購入済みのメロンパンの袋を素直に開ける彼女の素直さを可愛いなあと思っていれば。


気付けば何故かやたら近くにいた第3者が紛れ込んできた。





オレンジブラウンの明るい髪色が目立ちに目立つ鈴木は、春湖の遠慮ない暴言に面食らった様で固まる。


鋭い瞳と厳つめな容姿が相俟って不良と認識されている彼。

らしくないそれには、少し笑えた。








「春湖ちゃんは相変わらず口が悪いねぇ」


「な。」


「今のは鈴木が悪いけど」


「佐藤はどっちの味方なんだよ」





鈴木の相棒である佐藤までもが参加してきて、いよいよな異様メンバーで固まる教室の片隅。





そして、


「俺は清子ちゃんの味方♡」


と、蒲公英の綿毛のような軽さで、佐藤がにっこりと笑う。


ミルクティー色、羨ましいほど艶艶しい相手の髪がさらりと揺れた。








今年に入って同じクラスになり知り合った相手たちは、元々。顔の広い春湖の友だちだったようで、こうしてこんなにも地味な私を嫌煙することなくフレンドリーに接してくれる。








「は?」


「怒んなよ鈴木」


「焦んなよ鈴木」


「……誰も怒ってませんけど佐藤くん。つーか全くをもって焦ってませんけど春湖さん。」


「なに言ってんのみんな」


「ここは俺の味方しろよ清子。せめて。」





案外いじられ役(佐藤と春湖からのみ)でもある鈴木の偉そうな懇願に「次から気をつける」と真剣に頷けば。








「…………あっそ。」


「うん。」


「これから俺の味方してくれんだな?」


「うん。」





執拗に確認してくる鈴木をニマニマとしたり顔を並べた春湖と佐藤は、とりあえず置いといて。





春湖が失恋したことを聞き入れた途端、愉しそうに、嬉しそうに。やってきた鈴木。


そのことから、鈴木が抱く春湖への想いを勝手に想像して。

恋情だと結びつけて。








「それ、忘れんなよ。」





春湖の親友である私への味方要請を強く望む鈴木を、少し可愛く、大分に天の邪鬼だなと思った。

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