地味子ちゃんと天の邪鬼くん
鈴木は天の邪鬼なやつだ。
第1話
「1週間前に別れた彼氏に、彼女ができてました。」
「急だね」
「悲報」
「辛いね」
「くっそ辛い」
突然に荒くなった言葉遣いは大目に見るとして。
切ない現実に対面してしまったらしい春湖(はるこ)は、がばり。と、机に突っ伏した。
お昼休みの長閑な教室。
窓際から穏やかな日差しが届くも、彼女の心は土砂降りなんだろう。
太陽に照らされる春湖の髪、金色がきらきらと光る。
「見る目がなかったんだよ」
「追い討ちかけないで清子(きよこ)」
「じゃなくて、彼の見る目。」
「………………。」
「春湖を選ばない相手の見る目がなかった……うわっ!」
ゆっくりと身を起こしていく春湖。
そのまま彼女はがばり。と、私を遠慮なく抱きしめた。
派手な彼女に囚われる地味な私は、傍から見れば異様な光景に映っただろう。
「ありがと清子。大好き。」
「あ、ありがとう……?」
「その黒髪も、三つ編みも、眼鏡も。地味要素3点セットを華の17歳になる今でも毎日掲げてる清子を愛してる。」
「あんまり褒められてる気しないんだけどそれ」
私の容姿、最大の特徴たちを挙げていくそれに苦笑する。
幼稚園から今年まで、高校に入学して2年経った今も尚ずっと同じクラスという奇跡の幼馴染は、良くも悪くも素直だった。
そういうところが、春湖の個性で。
そういうところは、私の憧れでもあるんだけれど。
手作りお弁当の卵焼きをもぐもぐと咀嚼しつつ「ほらほら、食べよう。」「うん。」と、切なく可笑しな空気を一撃する。
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