第5話
―――――――――――…
「晟」
「……………」
「おーい。晟ー」
「え…あ、悪い。何。」
オレンジ色に染まる教室。
そこで、数年前にメジャーデビューした4人組ロックバンドのセカンドシングルを、今どき古いと思われるだろうCDウォークマンで半年前から愛用しているネイビーブルーのヘッドホンを繋げ聴きつつ。
部活生が蔓延る外へと視線を落としていた為、目の前でひらひらと手を翳してくる男に気付けなかった。
「へー…晟、こんなの聴く男だったとは。世の中は意外なことだらけだねえ。」
「澪(みお)。落とすなよ。」
ひょい、とまだ音が鳴り続けているそれを取り自分の耳に持っていくソイツに、重い息を吐きながら注意を施した。
左右に軽く頭を倒し、目頭を押さえる。眉間に自然な皺が寄った。あー俺肩凝ってんな。なんでだろ。
ゆっくり顔を正面に向け澪を見ると、驚いたように固まっている表情。けれどすぐに微笑みを模り、
「じゃあ…はい。返す。」
まるで表彰状を渡すみたいに、気持ち悪いほど御丁重に返されたヘッドホン。うわ。コイツ馬鹿にしてんな。
「…。どーも。」
「(うーわ。舌打ち。)いえいえ?」
ウォークマンの一時停止ボタンを押し短く舌を鳴らせば、澪が可笑しそうに笑った。…くたばれ。
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