第4話

「あ、歳下なんだろうけど、敬語とかいらないから。今更あんたから生意気さをとっても…なんか、変な感じするもん」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


「うん。てか、名前は?」


「あきら」



日本が重んじる社会制度“年功序列”を完全スルーした自由な振る舞いには、目を瞑るらしい。さらしなあいこはクールに見えるけれど、優しいと思う。




「あきら…どんな漢字?」


「一文字で、“晟”。日の下に、成る。」


「へー…初めて知った。その漢字。」


「まあ。メジャーなあきらって漢字は他にあるし」


「あんたのいいじゃん。晟。今度意味調べてみよ」




パーカーのポケットから自身のスマホを取りだし、生まれたその日から今この瞬間も呼ばれ続ける名を入力し漢字を確かめながら、楽しそうに声を明るくしているところとか。


分かりにくいけれど。たぶん、心の、奥の奥の奥、その辺り。








さわさわ揺れる柳の下。

この日も、初めて会った日と同じように、日付が変わるまで話をした。






「なあ」


「うん?」


「先週言ってた、あれ。スーパーボールの」


「ああ…どした?」


「自分と同じように考えてる内容の曲があるって言ってただろ?それ、なんて曲?」


「……………」



別れ際、さらしなあいこは、


とても楽しそうに。幸せそうに。

とても苦しそうに。寂しそうに。


静かに、微笑む。

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