第6話
ベンチの背もたれに深く身体を預ける。目を閉じて、今までに紗莉さんと重ねた会話を思い返した。
中学の終業式をサボって突撃したクリスマス
年明けの始業式をブッチして突撃した1月
ウキウキして突撃したバレンタイン
チロルチョコのお礼に花束を持って突撃したホワイトデー
保護者に混じって突撃参加した女子高の卒業式
入学式の後に突撃した初めての看護学校
子どもの日に突撃し────あれ、ちょっとストップ。
俺、突撃しかしてなくね?
進歩のしの字も見当たらなくね?
「どうしよう!?紗莉さんに会えたのが嬉しくて気付かなかったどうしよう!?」
「…………なにが?」
「洸!!」
ナイスタイミング!さすが俺の親友!
がっ!と目を見開き気付いた事実に頭を抱える。そんな俺の隣に、身を引きながらも座った相手の肩をぐわしっと掴んだ。
そのまま、ぐらんぐらんと揺さぶる。
自分の動揺を誤魔化すように。
洸はなされるがまま、それでも話を聞いてくれるらしく、続きを促して。
「俺、紗莉さんと何の進展もしてなくね!?やばくね!?出会ってもう246日も経ってるのに!?」
「えー……数えてんのきっも……」
なんだとこの野郎……って、今はそれどころじゃない。洸の可愛らしい中性的な見た目と反しすぎた毒舌は今に始まったことじゃない。どうどう。落ち着くんだ俺。
洸から距離をとり手を離す。随分と揺らしてしまった筈なのに、洸の美貌には一寸の狂いもない。くそう。いつでも美人な奴だな悔しい。
それよりも。紗莉さんとのこれからをどうしたものかと悩む。うんうんと唸って、死んだ瞳のままベンチに身体を投げ出した。
やべー。思い付かねー。
あまりにもな姿を哀れに思ったのか、洸が深いため息を吐く。
そして。
「味方つくれば?」
「味方?なら、理事長とか洸がいるじゃんか。こうやってなんだかんだ話聞いてくれたり応援してくれたり……」
「そうじゃなくて、相手サイドに繋がってる、味方。」
「ほう?」
「その方が、上手くいくこともあるんじゃない?一方的な猪突猛進じゃ、大した道は開けないよ。同じ道を進むだけ。意味ない。」
マイペースに、持っていたらしいサンドイッチの封を開ける洸。その横顔に、キラキラとした後光が差している気がした。
なるほど。
確かに、一理あるような。
でもなあ……味方味方……
紗莉さんとつながりのある味方────あ。
いる、かもしれない。
しかも、今ここから、すぐ近くに。
向かいの校舎に、見覚えのある男がひとり歩いている。窓ガラス越しに確認したその姿を、意を決して追うことにした。
紗莉さんと結ばれることができるのなら。
恥もプライドもクソくらえ、と。
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