雨の中の出会い
第1話
足の裏に、鋭い痛みが走った。
鈍すぎる歩みを止める。見てみれば、ガラスの破片がキラリと光った。街灯のボヤけた白に照らされ、存在感強く落ちている。
ため息に似た何かが零れそうになった。けれど、そんなモノを外に吐き出しても意味がない。惨めになるだけだと知ったのは、いつだったっけ。
仕方なく、歩みを再開する。行く宛もないけれど、帰る宛も今はない。交番に行っても『また君か』と、また顔をしかめられるのがオチだし、バイト先の新聞配達場所はまだ閉まっている。それに、もうこれ以上迷惑はかけられない。かけたくない。
ぺた、ぺた。気持ちの悪い足音が、ずっと付いてくる。他の誰でもない自分のモノなのに、吐き気がした。頭も痛いし、顔もヒリヒリする。腕もお腹も腰も足も、何もかもが痛い。寒い。さみしい。
いつか読んだ小説で、痛みに耐え切れず気絶する、みたいな表現があったけれど、いっその事そのくらいボロボロにしてくれればよかったのに。
中途半端に、動けることも辛かった。
見知らぬ公園に入る。ドーム型の遊具、ブランコにすべり台、鉄棒に砂場。ひとしきり揃ったそれらの端っこに置いてある、ベンチ。
木製のそこに座って、背もたれに寄りかかって、足を上げて、伸ばした。左の足先から生温い液体がぽたぽたと落ちる。気持ち悪かったけれど、突然降り出した雨が紛らわせてくれた。
ザアザアと、鉄砲水のように猛烈に降り注ぐ。傘を持ってくればよかった、なんて非現実的に考える自分を嘲笑った。そんな余裕、なかったクセに。
目を閉じる。疲労からくる眠気も、痛みの所為で堕ちれない夢の中も、中途半端で泣きたくなった。
このまま死ねたら。
私はきっと、心から笑えるのに。
吐き出した息が震える。
鼻先に目頭に熱が集まる。
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