第46話
しずかさん。
私は、あなたに会ったこともありません。
見たことすら、ありません。
それでも不思議と、伝わります。
vegetablooseを見ていれば、知ることができました。
あなたの想いを。
あなたの願いを。
あなたの優しさを。
あなたと過ごした全ての時間を糧に頑張ってきたというvegetablooseは。
あなたにとっても、大切で。
きっとそれこそ、唯一無二の存在で。
あなたが頑張れる源、だったのでしょう。
「……でも、レンは。しずかに関して、いっつも大事なとこで譲って引いて、相手を尊重して。遠くから支えてたから。たぶん、誰よりも後悔が大きいと思う。もっと踏み込めばよかった、とか。もっとちゃんと……とか。色々。たくさんのこと。」
「………………」
「だから、怖いんだと思う。」
「怖い……?」
「上手に忘れられないまま、俺やソウやマモルみたいに、しずかの望み通りに気持ちを処理できないままだから。怖くて哀しくて、苦しくて。」
「………………」
「そんな気持ちのまま、有須川さんと向き合ったり付き合ったりするのが、申し訳なくて。どうしようも、ないんじゃないかな。」
「………………」
「有須川さんのこと、本気で大切だからこそ。」
「………………」
「レンは、そういう男だよ。」
とうとう。
我慢しきれない切なさが、小さな雫となって頬をなぞる。
テツさんの心地よく暖かい陽だまりのような声には、安心して信じられる、不思議な力があった。
ねえ、テツさん。
ソウさんとかマモルさんとか。
もしくはレンさんとか。
私の話を聞く中で、もしかしたら。
簡単に把握済みなことかもしれませんけれども。
私、馬鹿で単純だから。
根本はただの陽気なポジティブだから。
テツさんの言葉、間に受けますよ。
飲みこんで、活かしますよ。
「有須川さん、」
「っ、はい」
「俺が言うのも変だけどさ、」
「?」
「レンのこと、見捨てないでやって。」
「……はい。」
「助けて、救ってあげて。」
「…………はい。」
仲間思いで家族思い。
懐の深すぎるテツさんが、滲んで霞む。
それでも、力一杯、頷いた。
「レンのこと、頼んだよ。」
窓から差し込む光の中、歩いて行くテツさんの背中を、最後まで見送る。
そうして、長い長い私の恋に、最大の決着をつける時がきた。
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