第五種 刷り込まれた愛情


 BGM「ジングル」STR


ネオ:オートマティックロンド、第五種、刷り込まれた愛情


 BGM「ジングル」DWN


○ロボラビィ


ネオ:お久しぶりですね、ノゾミさん、アカツキさん。マスターは?

アカツキ:ドクター・チアキと話があるとのことでした。自分たちは先行してきました

ネオ:そうですか。ではマスターの研究所へ案内しますね


 ネオ・アカツキ・ノゾミは研究所へ歩いていく

 日常会話を振るように、ネオがノゾミに話しかける


ネオ:お元気でしたか?

アカツキ:マスターの体調に変化はありません

ネオ:僕はノゾミさんに聞いたんですけど

アカツキ:マスターが応える必要性を感じられません

ネオ:……そうですか

ノゾミ:ちょっと、なんでにらみ合ってんの

ネオ:ノゾミさん、ココア、好きでしたよね?

ノゾミ:好きだけど。なに

ネオ:いいえ。好きなものを出して喜んでもらうのが僕の喜びなので。(ノゾミを見て)――落ち込んでいるのは、らしくありませんよ?

ノゾミ:それは(アカツキを見る)ごめんね、アカツキ。アンタが悪く言われたの、アタシのせい

アカツキ:否定します。自分がグランド・ゼロの壁を溶かしたのは――(ネオの存在を確認し、沈黙する)

ネオ:壁を溶かしたんですか? それはまた、大胆なことを

ノゾミ:アカツキが誤作動を起こしちゃって

ネオ:……欠陥が出たのかもしれませんね、プロトタイプですから

ノゾミ:ツキノに調べてもらうためにここにきたの

ネオ:そうでしたか


○ツキノの研究所


 扉が開く


ネオ:では僕は飲み物を用意してきますね。ソファーにでも座って――


 マゼランが飛び出てくる


マゼラン:ノゾミー! アカツキー!

ネオ:(こめかみに怒りマークが出る)アヒルさん、なぜいるんです

マゼラン:んだよ。いちゃ悪いってのか?

ネオ:勝手にマスターの研究所に入るなんて、つぶされたいんですか?

マゼラン:なにお!? ノゾミの一大事だって聞いて飛んできたんだぞ!

アカツキ:マゼラン、飛行が可能になったのですか? いつの間に

マゼラン:いや、今のは言葉のあやっつーか。歩いてきたけど

ネオ:その外見で空を飛ぶと、もれなくUMA(ユーマ)に認定されそうですね

マゼラン:未確認飛行物体じゃねぇーよ!

ネオ:はぁ、もういいです。座って待っていてください。お茶を用意しますから


 ネオが去る

 アカツキ立っている

 ノゾミはソファーに座りマゼランに両手を差し出す


ノゾミ:マゼラン、抱っこするからおいで。(マゼランを抱きしめる)はぁー、このぶさカワに癒される日がくるなんて

マゼラン:俺はいつでもプリティーだろうが!! てかアカツキ、なにしてんだ?


 アカツキは周囲をスキャンしている


アカツキ:周囲に危険がないかスキャンしています

マゼラン:あるわけねーだろ。ここ研究所だぞ


 スキャン完了


アカツキ:ですからスキャンするのです。マスター、お話したいことがあります

ノゾミ:(自分が想像していることをアカツキから言われそうで嫌な気持ちを含めて、少し冷たく)すぐ検査始まるから手短にね

アカツキ:先ほど自分がグランド・ゼロの壁を溶かした行動についてですが。あれは外部信号による命令です

マゼラン:は? ちょっとまて!? ちょい待ち! って、ノゾミ!んな力一杯抱きしめるな!!

アカツキ:待てません。マスター、聞いてください。外部命令を送信できるのは自分のコードを解析できた人間だけです。そして現在、該当者は1名です

マゼラン:なに、言ってんだ、その言い方じゃまるでツキノが

アカツキ:断言します。外部信号を送信したのはツキノ博士であると


 マゼランを抱きしめたまま俯いて大声を出すノゾミ


ノゾミ:(怒り)そんなこと、あるわけないでしょ!!

アカツキ:(ノゾミの怒りに少しだけ吃驚して)ですが自分は誤作動を起こしていません。ならば考えられるのは――

ノゾミ:(ふて腐れ)誤作動じゃないって、アカツキが思ってるだけでしょ? どこか壊れてるのかも。だからツキノに診てもらおうって

アカツキ:命令であれば従います。ですが、ツキノ博士にはご注意ください

マゼラン:なぁ、ツキノはアンドロイド開発してるし、ネオのことだってすげぇ大事にしてるぜ?

アカツキ:それがどうしましたか

マゼラン:オレもよくしてもらったし

アカツキ:優しさが偽りでない証拠はどこにあるんです

マゼラン:優しさがうそだって証拠もないだろ!

アカツキ:否定します。過去、ツキノ博士がレジスタンスと会合していた記録が残っていました

マゼラン:は!? おまえ、いつの間にそんなこと調べて

アカツキ:マスターの身辺を調査するのは当然のことです。再度申し上げます、ツキノ博士は危険で――

ノゾミ:(ぼそりと)だからなによ

アカツキ:マスター?

ノゾミ:ツキノが危険だから、なんだって言うの?

アカツキ:距離を置くべきです。もしマスターがツキノ博士を信じているなら、裏切られて受ける衝撃が――

ノゾミ:誰を信じたってアタシの勝手でしょ!

アカツキ:その発言、マスターもツキノ博士を怪しんだことがあると判断します

ノゾミ:うるさい、黙って

アカツキ:マスター

ノゾミ:うるさいって言ってるでしょ!

アカツキ:黙りません

ノゾミ:っ! 何がうそかなんてのはどうだっていいわよ! アタシはツキノに救われた! パパとママがいなくなって、傍にいてくれたのはツキノだった!

アカツキ:それは弱者に対する刷り込みです。偽りを信じても、結局はまやかしです

ネオ:まやかしを信じてはいけない、そんな道理はありませんよ?


 ネオが入ってくる


ネオ:大きな声でしたね、皆さん。廊下まで響いてましたよ。はい、ノゾミさん、ココアが入りました


 ネオが机にココアを置く


ノゾミ:あ、の、ネオ。アタシ、ツキノのこと

ネオ:(かぶせるように)分かっていますよ。ノゾミさんがマスターを裏切るはずないんです。 ねぇ?

アカツキ:ネオから離れてください

ネオ:まったく、学習しないポンコツですね、E型は。いきなり入ってきて、ノゾミさんやマスターの関係を壊したいんですか?

アカツキ:偽りにすがって得る未来に幸せなどありません

ネオ:それは貴方が決めることではないでしょう? ノゾミさんはマスターと一緒にいることを望んでるんです

アカツキ:否定します。マスター、こちらに来てください

ネオ:行かなくていいですよ。やっぱり壊れてるんですよ、アカツキさんは。ねぇノゾミさん、スクラップにしましょう

マゼラン:おいこら、勝手に話し進めてくなよ

ネオ:アヒルさん、あなたはどっちの味方なんです

マゼラン:俺はノゾミの味方だ!!

ネオ:なら僕の味方でしょう? アカツキさんを捕まえますよ

マゼラン:なんでそうなんだよ! 


 ネオに連絡が入る


ネオ:ん? ノゾミさん、真実が気になるならマスターに訊ねてみてはどうです? ラボに着いたと連絡が入りました

ノゾミ:……分かった

アカツキ:いけません、1人で行かれては!


 急いでノゾミの元へ行こうとする


ノゾミ:アカツキはそこで待機! 動かないで


 ぴたりと止まるアカツキ


アカツキ:(悔しそうに)……命令を、実行します

ネオ:あはは、主従っぽいですね。そうです、それこそが僕らアンドロイドと人間の関係ですよ

ノゾミ:行ってくるね

アカツキ:マスター! マゼランを連れていってください

ノゾミ:1人で行けるから

アカツキ:お願いします!

ノゾミ:(ため息)……分かった。おいでマゼラン

マゼラン:オレは室内用ロボだから、なんかすんのは無理だぞ?

アカツキ:できますよ。マゼランなら――お願いします

マゼラン:ったく、しゃーねーな。行くぞ、ノゾミ。ネオ、アカツキのこと苛めんなよ?

ネオ:僕がそんなことをするとでも? 心外です

マゼラン:おまえ性格悪いから

ネオ:失礼ですね。楕円系の丸型で、不細工なくちばしつきロボットの癖に

マゼラン:ついにアヒルですらなくなった……

ネオ:ふふふ。行ってらっしゃい


 マゼランとノゾミ退場


○ロボラヴィ廊下


マゼラン:本当に聞きに行くのか?

ノゾミ:行くよ。いままで先延ばしにしてきたのがいけなかったの

マゼラン:……ツキノがどうであっても、オレはおまえの味方だからな

ノゾミ:ありがと

マゼラン:アカツキも、おまえの味方だぞ

ノゾミ:そうだね


○ロボラビィ


 機械の設定をしているツキノ


ツキノ:きたのね、じゃあ向こうの装置に――? アカツキは?

ノゾミ:置いてきた

ツキノ:貴女ね、アカツキをつれてこないと意味ないでしょ

ノゾミ:ツキノに話があるんだけど

ツキノ:(機械を操作しながら)なに?

ノゾミ:……あ、の『言わないと。伝わらないし。聞かないと、いつまで経っても疑うだけだし』ツキノは、アタシにうそ、ついてないよね?

ツキノ:(苦笑)真実だけを口にして生きていける人間なんて、そういないわよ、ノゾミ

ノゾミ:茶化さないで! お願い、信じたいから、答えて!

ツキノ:(手を止める)なにが聞きたいの?

ノゾミ:ツキノがレジスタンスの人と会ってたって、聞いた

ツキノ:それは、私が密通してるんじゃないかってこと?

ノゾミ:信じてないけど。でも、アカツキに説明しないと危険だって言って、ツキノの所に行くのも反対してくるから

ツキノ:……レジスタンスとは会ったことがあるわ

マゼラン:なんのために?

ツキノ:あれは8年前、兄さんが亡くなって半年……そうね、一緒に暮らし始めて、ノゾミが少しずつ懐いてきた頃かしら。やつらが突然やってきたの


○回想 ツキノの家


 薄暗い曇天の日

 雷が遠くで鳴っている


ノゾミ_子:ツキノ、おそと、暗いよ。ノゾミ、暗いのやだよ

ツキノ:雨がくるのかしら。大丈夫よ

ノゾミ_子:ううん。いっぱいいるよ! いっぱいいるんだよ

ツキノ:なにがいるの?

ノゾミ_子:お化け!!


 カーテンを開けるツキノ


ツキノ:(見渡して)いないわよ?

ノゾミ_子:いるもん!

ツキノ:……これだから子供は苦手なのに

ノゾミ_子:一緒に寝ていい?

ツキノ:仕事が片付いてないから

ノゾミ_子:やだぁあ、一緒にいるの

ツキノ:はぁああ。……なら証明してあげるわ。お化けなんて非科学的な存在がこの世にいないことを

ノゾミ_子:? ひかがく?

ツキノ:今すぐは無理だけど、お化けなんていないって私がつきつけてあげるから。今日は寝なさい

ノゾミ_子:一緒に!

ツキノ:……仕事が

ノゾミ_子:まだ、しょーめー、できてないよ!

ツキノ:はぁもう、分かったわよ。寝室に行って(テーマ曲を子守唄っぽく)――ようやく寝たわ


 チャイム


ツキノ:誰、こんな日に


 玄関扉を開ける


レジスタンス:カイヅカツキノさんですか?

ツキノ:(警戒して)そうですけど

レジスタンス:我らに同行してください


 ツキノを殴るレジスタンス


ツキノ:っぅ!?


 気を失うツキノ


○回想 レジスタンス本部


 椅子に縛られているツキノ

 意識が浮上してくる


レジスタンス:これはこれは、手荒な真似をして申し訳ない、ツキノ博士

ツキノ:誰なの、貴方たち

レジスタンス:我々はレジスタンスと呼ばれる組織の歯車です

ツキノ:反アンドロイド組織が私になんの用? アンドロイド開発を中止しろとでも言いたいの?

レジスタンス:反対に訊ねますが、なぜ貴女は開発をやめないのです? 肉親を奪われたというのに、憎くはないのですか?

ツキノ:恨んでないとでも思ってるの?

レジスタンス:ほぉ、さすが研究者の鑑、と申し上げればよいのか

ツキノ:御託はいいわ。用件はなに

レジスタンス:貴女は兄を殺したアンドロイドを憎んでいる。ならば我らの同胞になりませんか? あんな機械の塊など、人間の世には必要ありません

ツキノ:残念ながら、既に人間の生活を支える約1/3をアンドロイドが補っているわ。いまさら廃棄なんて世間が認めない

レジスタンス:ですが博士、再びアンドロイドによる惨劇が起きたらどうするのです?

ツキノ:あの事件は、どうせ貴方たちが仕組んだことなんでしょ!

レジスタンス:そうですよ

ツキノ:よくもぬけぬけと!

レジスタンス:あの鉄の塊は、誰に命令されても動いてしまう。自らが行う行為が善か悪かも判断せずに。そんなモノが往来を闊歩(かっぽ)しているなど、身の毛がよだちますよ!

ツキノ:制御すればいいだけの事よ

レジスタンス:できなかったから、悲劇が起きたんじゃないですか。アンドロイドの第一人者であるハルカ博士でも止められなかった。さて本題へ入りましょう。ハルカ博士の娘、ノゾミ。あの子を我々に渡してください

ツキノ:……ふざけてるの?

レジスタンス:彼女がアンドロイドなど人の世に不要だと説けば、少しは世間も耳を貸すでしょう。アンドロイドを憎むに相応しい子です

ツキノ:ノゾミはまだアンドロイドが怖いのよ!?

レジスタンス:好都合です。もしかすると、お友達のいる小学校でもアンドロイドが暴れたりするかもしれませんしね

ツキノ:やめなさい!! 子供たちになにをするもりなの!

レジスタンス:子供が殺されたとあっては親は怒り狂うに違いないですね

ツキノ:やめてって言ってるでしょ!

レジスタンス:なぜ我々が貴女の言うことを聞かなくてはいけないのか。どんなメリットが?

ツキノ:……私がレジスタンスに入るから

レジスタンス:それで?

ツキノ:ノゾミを説得してみせるわ。だからあの子に近づくのはやめて。過激なことをするのはやめて!

レジスタンス:……研究を続けながらですか?

ツキノ:望むようにするわ

レジスタンス:素晴らしい。思いがけないところから内通者を得られました。歓迎しますよ、ツキノ博士。裏切り者の研究者さん


○ロボラヴィ


ノゾミ:アタシの、所為?

ツキノ:違うわ。私が弱かっただけ

ノゾミ:なんで話してくれたの?

ツキノ:聞かれたからかしら

ノゾミ:……うそついた。いまうそついたでしょ、ツキノ。眉毛ぴくって上がった

ツキノ:はぁ。いいわ、全部言ってあげる。だから決断しなさい、ノゾミ

ノゾミ:なにを

ツキノ:レジスタンスに貴女を呼び込む期限は、もうないの

マゼラン:過ぎたらどうなるんだ

ツキノ:私もノゾミも殺されて終わりね

ノゾミ:……え?

ツキノ:決めなさい。アカツキを取るのか、私を取るのか

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る