石油

 石油は数十年後に枯渇するらしい。それを、数十年前に言っていた。そして今も、数十年後に石油が枯渇すると言っている。どうやら石油の探査、採掘技術が日々進歩しているかららしいが、どうせ変わってしまうもので評価して何になるのだろう。


 それはそうと、人間は考えるということをする。何かにつけて考え、自分の意見を出す。しかし、これも石油と一緒である。生きていく上で人の考え方とは変わっていくものだ。どうせ変わってしまうのに、今考えて結論を出して何の意味があるのだろう。だから私は、考えることをやめた。


 私が考えることをやめてから数十年が経った。今私は病室で人工呼吸器をつけ、生死の境を彷徨っている。流石にもう、私の考えが変わることはないだろう。だから私は数十年ぶりに考えるということを再開した。


 動かない体でどうにか目だけを動かして周りを見ても、誰一人側にはいない。考えることをやめた私を、家族は見捨てたのだ。仕方がないから思い出を振り返ろうとしても、振り返ることもない。それに気がついて、私は考えた。当然だ、と。無為に過ごしてきた時間に、感情など動こうはずもない。


 ああ、もっと考えて生きてくればよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る