SUSHI☆MICHEAL

悪食

第1話 SUSHI☆MICHEAL

――ドンッ!


「クソッ、寿司なんか握りたくねえ!」

マイケルはカウンターに拳を叩きつけた。

父は黙って包丁を磨く。冷たい沈黙。

寿司屋の家系? 純血? 伝統?

「HA! それが俺の人生の全部だなんて、冗談だろ!」


暖簾を蹴飛ばし、夜の街へ。

「自由だ。FREEDOM! 俺の人生はシャリサイズじゃねえ!」


その瞬間――

「海鮮党に清き一票をォォォォッ!」

――ギュルルルルルルルル!


ド派手な鮮魚カーが、ネオンごとマイケルをはね飛ばした。


「Oh my…SUSHI GOD…」

ドシャアアアアッ。

視界はブラックアウト。



---


目を開けると、そこは異世界。


空に二つの月、ド派手にそびえる魔導塔。

「OK, this is definitely NOT Tokyo.」

草むらには翼の生えたヤギがムシャムシャ草を食ってる。


そして――

少女が倒れていた。腹を抱え、苦しそうに。


――見捨てるのか?

この状況に見覚えがある。

そう、かつて憧れた俺のHERO

そう!アン〇ンマン!!!!

「No way. 腹ペコの子どもを見捨てるなんて、俺のシナリオにねえ!!!!」


ドォォォン!!!!!!!

マイケルの身体が光る。

『SUSHI☆MICHEAL…ACTIVATE!』


米粒が空から降り注ぐ。シャリが集まり、マイケルの手のひらで光る。


「俺は……寿司ヒーロー? Yeah, why not.」

だが――ネタがない。


川の方でザバァッと水しぶき。

現れたのは、デカすぎる魚。

顎ガチン! 鱗キラキラ! 尾びれドゴォォン!

「Ladies and gentlemen…DINOSAUR SALMON!!」


ダイナソーサーモン

危険度4。アメリカンコマンドー10人でようやく倒せるレベル。

「Good news. I’m not 10コマンドー。I’m just me。」


マイケルは飛んだ。ザバッ!

怪魚の口をガシィッと掴む。

「This is sushi time, baby!!」

ズバァァァン! 手刀で捌き切る。


光るシャリに、ピンクの身が乗る。

完成――ダイナソーサーモンの握り。


「Look at this… まるでテキサスの夕陽だろ?」

マイケルは少女に差し出した。

「Here you go, princess. One nigiri, on the house.」


だが――


「……生魚? No. キモい。」


バキィィィィン!

マイケルの心にヒビが入った音がした。


「WHAT!? 俺の劇的な寿司プレゼンを、ノー? That’s insane!」


少女は気絶。

川辺に取り残されたマイケルと、ピンクに光る握り。


「……OK. 異世界じゃ寿司はマイナーか。なら俺が流行らせてやる。SUSHI REVOLUTIONの始まりだ。」


夕日を背に、マイケルは立ち上がる。

背後で「TO BE CONTINUED…」の文字が光った気がした。


ゆけ!マイケル!


まけるな!マイケル!!


そう彼こそが

SUSHI☆MI

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