第2話 ある日の大好きな本の思い出 どうして私、泣いてるんだろう?

 ある日の大好きな本の思い出


 どうして私、泣いてるんだろう?


 本を読んで感動することはいっぱいあったけど、本当に涙を流して泣いてしまうことは初めてだった。

 だから、ぽたぽたって本のページの上にあったかい涙が落っこちたときに、私は、どうして私は、泣いているんだろう? って、とっても不思議な気持ちになった。

 心が熱くなって、感情が湧き上がってきて、どうしても涙をとめることができなかった。(こんなことは本当に初めてのことだった)

 私は思わず(少しだけこの気持ちのことを考えたかったから)本のページを閉じようと思った。

 数ページくらい本を読んで、本を閉じて、そのときの気持ちを感じながらゆっくりと本を読むことが私の本の読みかただったから、その癖もあって、私はなんだかその本から逃げるようにして、本を閉じてしまいたいって思ったのだった。

 でも本のページを閉じることはできなかった。

 私は泣きながら本のページの続きを読み始めた。(涙で少し世界が滲んでいて、ちょっとだけ文字がうまく読めなかったけど、頑張って読んだ)

 そのとき、私は本の中に描かれている世界の中にいたのかもしれない。

 本を読むってことはこういうことだったのかもしれない。

 私は今まで、もしかしたら、とってもたくさんの本を読んできたのだけど、『本当に本をちゃんと読めていたことは一度もなかった』のかもしれないって思った。(もしそうだとしたらすごく悲しいことだったけど、そうなのかもしれないって思った)

 本を読むってこんなにも感動することだったんだ。

 そんなことを(まるで初めて夢中になって本を読んでいる、大好きな本を見つけたばかりの小学生みたいに)思いながら、私は本を読んでいた。

 夜の中で。

 本当はもう眠らないといけない時間だったけど、眠らずに本を読み続けてしまった。

 やがて、本を読み終えたときには、世界は朝になっていた。

 新しい朝がやってきたのだ。

 私はまだどきどきしている胸を読み終えた本でぎゅっと押さえながら、ゆっくりと窓のカーテンを開けて、眩しい朝の太陽の光の差し込んでいる世界を見た。

 見慣れた私の部屋の窓から見える外の風景。

 いつもと変わらないはずなのに、その見慣れた風景はまったく違う風景に見えた。(とっても驚いた)

 きらきらと全部が美しく輝いていた。

 きっと世界が(あるいは私が)本当に変わってしまったのだと思った。

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ゆうきの本 雨世界 @amesekai

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