雪原に咲く花

真っ白な雪原に、花を咲かせていく。

一つ、二つ。

私は作業をつづける。周りには、草木以外に、生物はもう何もいない。

とても静かな場所だ。

何気なしに、口笛を口ずさみながら。

口ずさんだ口笛の旋律は、はて、なんだっただろうかと考える。

それは、一昨日たまたまネットで見た、アイドルグループの新曲だった。

昔から、歌を覚えるのは得意だった。

覚えるというより、入ってくる、という感覚だろうか。

気が付いたら、鼻歌を歌う、口笛を吹く、よくあることだった。

一度見ただけなので、頭から最後までは覚えてはいない。サビの部分だけだ。

そのサビの部分を繰り返し繰り返し口笛で口ずさみながら、

私は雪原に赤い花を咲かせていく。

一つ、二つ。

その花は、一昨日見たグループアイドルが、ダンスでターンを決めたときに、

スカートがフワリと広がって、まるで花が咲いたみたいに見える様子を連想させた。

美しい映像だった。

私が咲かせる赤い花は、彼女たちの新曲リリースのお祝いになるだろうか。

いや、喜ぶわけないか。私は自嘲する。

私は作業を続ける。真っ白な雪原に、赤い花が咲いていく。

一つ、二つ。

私の奏でる口笛に、ときどき、鈍いノイズが混ざりながら、

真っ白な雪原に、赤い花が咲いていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編集「バレンタインデー」 春野日差 @harunohisasi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画