第26話 危機一髪の駆け引き


 コンコンというノックの音。ドア一枚隔てた向こう側から聞こえてきた母の優しい声に、僕と陽菜の心臓は凍りついた。僕の股間は彼女の身体の中にあり、陽菜の口には僕が罰として咥えさせたパンティが押し込まれている。この状況で母にドアを開けられたら、僕たちの秘密は完全に白日の下に晒される。僕は全身の血の気が引いていくのを感じ、呼吸を止めた。僕の腕の中で、陽菜の身体もまた、痙攣するように震えている。


 「蓮、少しお夜食でもどう?」


 再び聞こえてきた母の声は、先ほどよりも少しだけ強い口調だった。僕たちの心臓はさらに激しく鼓動する。陽菜は涙目で僕を見つめ、口に咥えさせられたパンティを必死に飲み込むように隠した。その小さな口元が、必死の思いで何かを訴えている。僕にはもう、何も分からなかった。ただ、母がドアを開けるかもしれないという恐怖だけが、僕の心を支配していた。


 その時、陽菜はか細いが、いつもの優等生の声色で答えた。


 「お母さん、ごめんなさい!今、蓮くんに勉強教えてもらってるの!」


 その言葉は僕の心を突き刺した。陽菜が咄嗟に発したその嘘は、僕たちの絶望的な状況を救うための唯一の希望だった。僕は陽菜の言葉に驚愕し、そして心の中で彼女の機転に感謝した。僕が何も言えないでいる間に、陽菜は僕の腕を掴む手に力をこめ、必死の思いで僕を操ろうとしている。


 「そう、頑張ってね」


 母の声が再び聞こえてきた。その言葉に僕たちの心臓は一瞬止まり、そして安堵の息を漏らす。遠ざかっていく母の足音が、静かな廊下に響く。その足音が完全に聞こえなくなった時、張り詰めていた僕たちの全身の筋肉が弛緩し、二人は顔を見合わせる。その瞳には、絶望的な状況を切り抜けたことへの強烈な安堵と、それを上回るほどの興奮が宿っていた。


 陽菜は口に咥えていたパンティをゆっくりと吐き出す。彼女の口元から、唾液と愛液が混じり合った透明な糸が引く。その光景は、僕たちの間に生まれた強固な共犯者意識を物語っていた。僕たちは今、家族という日常の裏で、誰にも知られてはならない秘密を共有する共犯者となった。その事実は、僕たちの歪んだ絆を頂点にまで押し上げていく。


 「ひぃ…あはっ…よかった…」


 陽菜は安堵と快感の入り混じった声でそう呟いた。彼女は僕の胸に顔を埋め、身体を震わせる。その震えは恐怖によるものではなく、絶望的な状況を切り抜けたことへの興奮によるものだった。僕の股間が再び熱を持ち始める。僕たちの身体は、このスリルと背徳感に完全に支配されていた。


 僕は彼女を強く抱きしめ、その耳元に唇を寄せた。


 「…よくやった、僕の牝犬」


 その言葉に、陽菜の身体がびくんと大きく跳ねた。彼女の頬は赤く染まり、瞳には蕩けた快楽の色が浮かび上がる。僕の支配的な言葉が、彼女に新たな悦びを与えている。この危機一髪の駆け引きが、僕たちの絆をより深く、そして歪なものへと変質させていく。僕たちの秘密の日常は、もう誰にも壊すことはできない。僕たちはこのまま、共犯者として、どこまでも堕ちていくだろう。そしてその未来は、僕たちにとっての至上の幸福だった。

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