第6話 裏に焼き付く純白
僕は自分の部屋に逃げ込んだ。リビングのドアを乱暴に閉め自室の扉を背に体重を預ける。心臓は激しく鼓動を続けておりまるで今も彼女のすぐそばにいるかのような錯覚に陥った。荒い呼吸を整えようと深く息を吸い込むが熱い空気が肺を満たすだけで心臓の鼓動は一向に収まる気配がない。ドクンドクンと全身に響くその音は僕の脳髄を直接揺さぶり僕の思考を麻痺させていった。
瞼を閉じれば先ほどの光景が鮮やかに蘇る。ソファで無防備に寝そべる一条陽菜の姿。そしてめくれ上がったスカートの下に覗いていた純白の下着。それはあまりにも清楚で眩しい輝きを放っているのにその食い込み方が信じられないほどに淫らだった。完璧な優等生という僕の心の中にあった彼女のイメージは一夜にして音を立てて崩壊し代わりにその空白には家の中での淫らな姿が鮮やかに焼き付いてしまった。
僕は勉強机へと向かった。分厚い英単語帳を広げる。いつものように英単語を覚えようと努めるが文字がまるで意味を持たない記号のようにしか見えない。頭の中は陽菜さんのことでいっぱいで英単語の一つも頭に入ってこなかった。彼女がわざとやっていたのだろうか。あの無邪気な笑顔の下に隠された狡猾な計算。そう考えると彼女に対する見方が根底から覆され僕の心を恐怖すら感じるようになった。僕が知っている陽菜さんは一体どこへ行ってしまったのだろうか。
僕の身体は依然として昂ぶり続けている。制服のズボンの上からでも分かるほどの熱と硬さが僕の股間に宿っていた。それは僕の意志とは無関係に彼女の姿を見ただけで反応してしまった僕自身の身体に対する怒りでもありどうしようもない自己嫌悪でもあった。僕は彼女の罠にはまってしまったのだ。そしてそれに抗うことができなかった。
部屋の中はいつも通りの僕の匂いがするはずだった。参考書のインクの匂い鉛筆の芯の匂い窓から入る外の匂い。慣れ親しんだはずのそれらが今は妙に落ち着かない。まるでどこか別の場所に来てしまったかのようだ。そして僕は耳を澄ませる。閉じた扉の向こうから聞こえるかもしれない彼女の笑い声に怯えていた。もしかしたら陽菜さんは今頃僕の動揺を察してほくそ笑んでいるのかもしれない。そんな想像が僕をさらに追い詰めていく。
受験勉強という僕の人生にとって最も重要な時間が今彼女の存在によって掻き乱されている。平穏な日常を望んでいた僕の前に現れたのは清楚な優等生の仮面を被った小悪魔だった。僕はいつまでこの状況に耐えられるだろうか。そして僕はこれからどうすればいいのだろうか。この状況から逃げ出したい。そう思いながらも僕の脳裏にはもう一つの考えが浮かび上がっていた。それは彼女の淫らな姿をもっと見てみたいという抗いようのない欲望だった。
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