第5話 無邪気な挑発必死の演技
僕は息を殺しその場に立ち尽くしていた。身体は硬直したままでまるで呼吸の仕方を忘れてしまったかのようだった。僕の視線は彼女の無防備な下着から離れることができない。純白の布地が僕の網膜に焼き付いて離れない。こんなはずではなかった。僕はただ家に帰って自室で受験勉強を再開するつもりだった。なのに目の前には僕の知る一条陽菜とは全く違う姿の彼女がいる。清く正しく美しいクラスの優等生。その仮面が今音を立てて崩れ去っていくのを目撃しているようだった。
ふと彼女の身体が微かに動いた。僕は反射的に目を逸らそうとしたが間に合わない。彼女はまるで寝返りを打つかのようにゆっくりと身体をねじりそして上体を起こした。その一連の動作はあまりにも自然でまるで本当に今目が覚めたかのようだった。しかし僕の心はすでに疑念に満ちていた。これは偶然ではない。これは彼女が仕掛けた「計画的犯行」なのだ。
「あれ夏目くんいつ帰ってたの?」
陽菜は僕に屈託のない無邪気な笑顔を向けた。その表情は学校で僕たちが話す時と全く変わらない。澄んだ瞳で僕を見つめ紅潮した頬はまるで今起きたばかりのあどけない少女のようだった。だが彼女が起き上がった際に腰を少しずらしたのが見えた。その動作によって下着の布地がさらに深く秘所に食い込みその輪郭をよりはっきりと浮かび上がらせている。僕はその淫靡な光景に再び思考が停止する。言葉を失い僕はただ彼女を見つめることしかできなかった。
「もしかして私のことずっと見てた?」
彼女は悪戯っぽく微笑んだ。その声は甘く響くのにどこか必死さが滲んでいる。僕が何も言えないでいると陽菜はさらに小首を傾げた。
「なーんて冗談だよ。だってこれただの下着だよ?」
「ただの下着だよ?」というその言葉はまるで僕を試しているかのようだった。いやそれだけではない。その言葉の奥には「私はただの妹じゃない女なのよ」という心の叫びが隠されているように感じられた。僕の知る陽菜さんならこんなことは言わない。しかし僕の目の前にいる彼女は紛れもなく陽菜さんだ。一体どちらが本当の彼女なんだ。混乱と動揺が僕の心を支配し僕はそれに伴う強い興奮を覚えた。
陽菜は蓮の動揺した顔を見て心の中で勝利を確信していた。彼は今私の完璧な演技に混乱している。これが第一段階の成功。しかし決定打に欠ける。彼はまだ逃げる可能性がある。陽菜はそう判断しわざとらしい寝返りを打ちそして起き上がった。心臓は早鐘のように鳴り響き顔が熱くなるのを必死で抑えながら彼女は完璧な優等生の笑顔を作り出した。
「ねえお兄ちゃん」
もう一度彼にだけ聞こえるように囁く。その言葉に蓮の身体がびくりと反応した。ああ可愛い。やっぱり私を意識してくれている。その手応えと喜びが陽菜の心を満たしていく。彼女は腰を少しだけずらし布地が秘所に深く食い込む感覚を確かめた。この羞恥心を完璧な演技で押し殺す必死さが彼には伝わらないだろう。だがそれでいい。私は今小悪魔を演じているのだから。
陽菜の潤んだ瞳が僕を見つめる。その瞳の奥には卒業までの残り時間に対する焦りそして何としてでも蓮を自分のものにしたいという切実な想いが宿っているように見えた。その瞳の輝きと演技で赤らめた頬の対比が僕の心をさらにかき乱す。彼女は必死にこの関係性を変えようとしている。そしてそのためにこんなにも大胆な行動に出ているのだ。
僕は言葉を失ったままだった。頭の中はぐちゃぐちゃで何も考えられない。清楚で完璧な優等生という僕の陽菜さんに対するイメージはもうどこにも存在しない。代わりに僕の目の前には僕にだけ淫らな顔を見せる無防備で狡猾でそしてどこか必死な一人の女がいる。この状況にどう反応すればいいのか僕には分からなかった。ただ僕の身体は正直に昂ぶり始めていた。制服のズボンの下で僕の股間が熱を持ち始める。僕はこの現実から目を背け部屋へ逃げ帰るべきなのか。それともこの甘く危険な挑発に乗るべきなのか。僕はまだその答えを見つけられずにいた。
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