IラブHero(カッパ)! 第2話

BGM【タイトル】


王様 「IラブHero(カッパ)! 第2話」 ※ 読み方(アイラブヒーローカッコ、カッパ)


○庭


SE《鳥の声》《水を撒く》


ギル 「〔長い溜息〕やっと庭師の仕事ができるよ。花はいいよねー、暴れないし、無茶な事言わないし。愛らしいっていうのは、こういうものを指して言うべきだよ」


SE《草を掻き分ける》

BGM【時代劇っぽいの】


朔太郎「姫は一体どこへ行かれたのだ。こちらだと思ったのだが」

ギル 「あ、サク先輩!?」


SE《説明をする前の音》


ナレ 「説明しよう、今出てきたギルバートではない方の人物は、樫幸之助・朔太郎。この、なんちゃって王宮殿の姫付きの護衛だ。時代錯誤だろう、お前。と言いたくなるような侍スタイルで、小さく愛らしいものが大好き」


BGM・STOP


ギル 「その説明、要るの?」

ナレ 「新キャラの説明は必要だ」

ギル 「今までやってなかったのに――」

朔太郎「ギルバート殿。いかがした?」

ギル 「い、いや、なんでもないよ! てより、その……大丈夫でしたか? 馬車から落ちたって」

朔太郎「心配無用でござる。拙者、馬車より落ちたくらいでは死なぬゆえ」

ギル 「普通、死ぬと思うけど」

朔太郎「〔苦笑〕その程度で散るのであれば、鍛錬が足りぬという事。時にギルバート殿、姫の行方を知りませぬか?」

ギル 「えーと確か……天使と一緒に部屋でカッパについて語り明かすって言ってましたけど」

朔太郎「ううむ。では拙者が傍におらずとも大丈――む? 天使? 今、天使と言われたか?」

ギル 「はい。ナマ天使だって言ってましたよ。なんでも、カッパを調べに来たとか」


BGM 【飛翔】


朔太郎「ナマ天使!? それはまさか、ノストラ・ティラノザウルスの預言書にある第3か4の天使の事では?」

ギル 「(呆れぎみに)第3か4って、なに」

朔太郎「その者が地上に降りしとき、世界は混沌と化し、やがては破滅すると予言されている」

ギル 「あっはっは、まっさかー。生臭い天使が空から落ちて庭にクレーターができただけで、世界が滅びるとかそんなのありっこない」

朔太郎「しかし!」

王佐 「(叫び)ほうぁああ!!!」


SE《振り向く》


ギル 「今の悲鳴は!?」

朔太郎「門の方でござる!」


SE《走る》

BGM・STOP


○門前


SE《ザっ、と地面を擦り立ち止まる》


朔太郎「今の悲鳴は、なにごとでござるか!」

王佐 「ああ、ああ! なんて事でございますですよ!」


SE《説明をする前の音 特にこれと決まってないがなにか》


ナレ 「説明しよう!」

ギル 「しなくていい!」

ナレ 「……ぐすん! 意地悪!!」


SE《足音一つ》


朔太郎「ナルキッソス殿! いかがした!」

王佐 「朔太郎。王宮を守るためのゲートが破られましたのでございます!」

朔太郎「なにっ!? では、何者かの侵入を許したという事か!?」

王佐 「この万全の警備体制の中、ゲートを破るとは、只者ではございませんですよ」

朔太郎「ゲートの破壊状況は」

王佐 「壊滅的でございます。根こそぎかじられ、見る影も!」

朔太郎「くっ、なんと卑劣な!」

ギル 「ちょ、ちょっと待って」

王佐 「なんでございますです?」

ギル 「かじられって、なに。なんでゲートがかじられるのさ」

朔太郎「ギルバート殿は知らぬのか。この王宮殿を守る最新のゲートはキュウリでござる!」

ギル 「……キュウリで守られてたの!? この王宮!?」

王佐 「ときにはヘチマでございますですよ」

ギル 「どっちだって一緒だよ!」

朔太郎「(わななく震えながら)恐ろしい。どんなつわものだ!」

ギル 「恐ろしいのはキュウリに守られてるって事に、なんの疑問を抱かない事だよ!」

王佐 「(悔しそうに)やはり、産地直送で新鮮なキュウリを用意していたのが敗因でございますですね。味よし形よし匂いよしとくれば、キュウリファンが黙ってはおりません」

ギル 「どこにいるのさ、キュウリファン」

王佐 「ちなみにゲートのバーは白イボ系といいまして、市場に出ている約9割がこのキュウリでございます。特価価格はなんと、3本纏め買いで、たったの85円!」

ギル 「安!」

朔太郎「さぞ新鮮な味だったに違いない! くっ、拙者も一度として口にした事がないというのに」

王佐 「毎月必ず3回はかじられるうえに、すぐ腐敗してしまうので、修繕にかかる費用が半端なく、国費がそろそろ底をつきそうなのでございます」

ギル 「国費少なすぎでしょ! しかもサク先輩、一度もキュウリ食した事ないって、どれだけひもじい食生活なの!?」

朔太郎「武士としては、断食し、己の限界に挑戦すべきかと」

ギル 「先輩は武士じゃなくて姫様の護衛だってば!」

王佐 「毎度毎度、人の家の玄関先の防犯用キュウリをかじるなど……もうわたくし、怒りましたですよ。これはわたくしどもへの宣戦布告でございます!」

ギル 「ま、待って待って! キュウリかじられただけで、なにもそこまで怒らなくても」

朔太郎「甘い事を言ってはおられませんぞ、ギルバート殿。もしキュウリをかじった賊が王宮内に侵入していたら一大事でござる。姫が!」

ナレ 「そこまで言って、朔太郎は考えた。以下、妄想」


BGM 【侵入者】


賊  「ぐへへへ、大人しくしろ。さもなくは、お前の命は――」

姫様 「ワタシの邪魔するの、よくないネ! 死んで償うヨロシ」


SE《攻撃音》


賊  「うわぁあ!!」


SE《倒れる音》

BGM・STOP


ナレ 「妄想終了」

王佐 「大丈夫でございますよ。姫様でしたら賊など小指一つで潰せます。瞬殺でございます」

朔太郎「そ、そうであった。姫にかかれば賊など足元を這っているアリも同然」

ギル 「強すぎない、うちの姫様!」

朔太郎「(ちょっと切なげに)実際、姫は強いのでござる」

王佐 「それより心配なのは陛下でございますです! 現在、陛下は秘密裏になにかを作っていらっしゃるらしく、それを諸国にばらされては、国の存亡に関わる次第でございますですよ!」

ギル 「そ、そんな秘密事項、この国にあったんだ」

王佐 「侵入者の目的は一つ。それはつい先日完成した、あの秘密兵器です」

ナレ 「数週間前の出来事」


○研究施設


SE《コポコポ》

BGM【悪役】


王様 「ふぉっふぉっふぉっ、これで世界はワシのものじゃ」

王佐 「陛下、そろそろお時間でございますですよ」

王様 「おお、そうか。これが完成すれば、全世界がワシの前にひざまずくのじゃな」

王佐 「はい。…………たぶん」

王様 「え、たぶん?」

王佐 「いえいえ、なにも言ってはございませんです。さぁ陛下、公務のお時間でございますですよ」

王様 「そうじゃな。名残惜しいがゆかねばならぬ。また戻ってくるぞ、ワシの可愛いメカカッパよ」


SE《コポコポ》


王様 「お前が目覚めれば、娘に自慢ができる。ふぉーっふぉっふぉっふぉ!」


SE《足音》《扉が開く》《扉が閉まる》

BGM・STOP


王佐 「国の最高技術を投入してなにを作るのかと思えば……メカのカッパでございますですか。……あの変な性格さえなければ普通によい陛下なのでございますが。しかし、このメカカッパ。見れば見るほど美しい。このわたくしと美を競えるほどでございますですよ」


SE《ピシ》


王佐 「ん?」


SE《ピシピシ》


王佐 「ん? んんん?」


SE《ピシピシピシ、ガッシャーン!》


王佐 「うわわわわ? なにごと、なにごとでございますです!? 機械が勝手に動いて!!」


SE《ピー・ガッション!!》


カッパ「…………カーパー」

王佐 「あら……動いちゃったでございますですか」


○門前


SE《鳥の鳴き声》


王佐 「と、こんな事がございまして」

ギル 「それと今回のバーがかじられたのに、関連性あるの? しかも秘密裏って、今僕らにもろバレしたのはいいの?」

朔太郎「なるほど。つまり、賊の目的はメカカッパであると、そういう事でござるか」

王佐 「おそらくは」

ギル 「無視しないで!! て、ゆーより、どこの物好きがメカのカッパ目当てで王宮に侵入するのさ」

朔太郎「そうとも限らんぞ、ギルバート殿。先日姫と訪れた隣国では、カッパをめぐって果し状を叩きつけられたのでござる」

王佐 「つまりそれは、開戦の申し込みでございますか? 嫌でございますね、郵便物はきちんと公共の機関を通していただきたいのでございますよ」

ギル 「開戦の申し込みはいいの!?」

王佐 「いつもの事でございます。で、その申込状はどちらに?」

朔太郎「姫がお持ちのはず」

王佐 「分かりました。では姫の許に参りましょう。ギルバート、あなたはこの場に残り、外部の人間がこの王宮に入るのを阻止なさい」

ギル 「特殊能力もない、スコップしか装備品のない庭師に、そんな重大な仕事させないでよ!」

朔太郎「後は任せるでござる、ギルバート殿」

ギル 「任せないでお願い! 無理だから――」

王佐 「ではいきます。秘儀、サイッキック、カッパ跳び!」


SE《瞬間移動》


ギル 「消えた……瞬間移動って。ナルキッソス様、そんな事できたんだ」

ナレ 「あ、ギルバート、危ないぞ」

ギル 「はい?」

ナレ 「ほら、吹き矢で狙われて――」


SE《吹き矢が刺さる》


ギル 「あ、あれ、なんだかすごく眠く……」


SE《倒れる》


王妃 「うっふっふっふ。これであなたはあたくしのモノ。うふふふふふ!」

BGM【次回予告】


王様 「次回予告。IラブHero(カッパ)!!」

ナレ 「何者かに眠らされたギルバート。彼が目を覚ますとそこはSMパーティ会場だった。叩かれて喜ぶモブ、モブ、モブ。そんな中、ギルバートをさらった悪の組織が交渉を持ちかける。死ぬのが嫌なギルバートは勿論交渉に応じるのだが、卑劣なことに、悪の組織はギルバートの唇を奪おうと――」

ギル 「言わせるかー!」


BGM・STOP

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