第三話、ゴールに懸けた願い

『』 語りの部分

【】台詞の後ろで流れる部分(カットする場合もある)

「」通常の台詞

()感情説明

◆ 状況説明

○ シーン(物語の区切り)


◆ナレーション


三森「王子さまと、委員長!」

木島「第三話、ゴールに懸けた願い」


◆昼休み屋上で木島と中村が昼食を食べている


木島『王子さまはいつもピンチのお姫さまを助けにいく。けれど王子さまにも都合というものがあるだろう。たとえば、道端で村人に恋をしてしまったとか。王子さまは村人と一緒にいたい。けれど村人は言う。お姫さまを救いに行ってくださいと。断ることはできない。だって王子さまは王子さまなのだから。決められた配役は変わることがない。だから、王子さまが村人を愛しても、お姫さまを助けに行って、お姫さまと幸せになる。これが王道のストーリー』

木島「なんで王子さまが恋するのはいつでもお姫さまなんだっ!」

中村「蓮ちゃん、なに読んでんの?」

木島「委員長から借りた演劇の台本」

中村「演劇部は手伝わないんじゃなかったのか?」

木島「それは、そうだけど」

中村「せっかくのチャンスだったのに、なんで断ったりしたんだ?」

木島「俺だって断るつもりなんてなかった。けど、気がついたら断ってたんだ! それより、この話、なんで王子は姫しか愛さないんだ」

中村「それが王道だからじゃ、ナインデスカ?」

木島「他に好きな人ができたらどうするんだ」

中村「そんなの、モノガタリの中の人に言ったって仕方ないだろ。つーか蓮さ、いつから三森のこと好きなんだ?」

木島「さぁ」

中村「さぁって、好きなんだよな?」

木島「たぶんな」

中村「たぶんってお前……」

木島『いつから好きかなんて、わからない。けど、向いてない委員長の仕事を文句いわずにやってるところとか、結構押しが強いところとか、黒板消すとき一番上だけ届かないところとか、可愛いなって思う。どうしようもない。……重症だ。たぶん好き、じゃなくて重度に好き、かもしれない』

中村「そうだな、重症だ」

木島「……中村、なんで俺の心の声に突っ込みを入れるんだ」

中村「全部もれてるぞ。しかも、今そこに委員長がいた――」

木島「え、うそ――ったぁ、なんか頭ぶつけた。あれ? 委員長は?」

中村「(押し殺すように笑いながら)蓮、お前、面白すぎ。嘘に決まってんだろ」

木島「笑うなら普通に笑えよ」

中村「悪い、悪かったって。侘び代わりにいいこと教えてやるよ。委員長、いつも購買部でパン買ってるんだってさ」

木島「そんなの俺だって知ってる」

中村「ばっかだな。こういうときのセオリーは、混雑時、パンが買えない委員長の代わりに蓮が買って、さりげなく渡す。と、好感度アップ! 女の子は思う、(女性を演じながら)あ、この人カッコいいかもっ!」

木島「あー、中村、あのな。このパン、委員長が買ったやつ」

中村「え?」

木島「演劇で鍛えてる声を出せるいい機会だって、張り切って俺の分まで注文してくれた」

中村「連ちゃん、なにしてたの?」

木島「中々声出せなくてさ。横にいた委員長がいきなり通る声で、いちごジャムパンとサンドイッチ、カツサンドとウィンナーロール、牛乳2つください! って」

木島『言い切った後の委員長はやりきった感が全身に溢れていた。笑顔でパンを渡してくれたときとかも、うん、可愛かったし』

木島「ダメだ、可愛いしか出てこない。いや、カッコいいんだけどな、可愛いんだよ」


◆三森と橋本が屋上に来る


中村「力説するな。わかったから――(亜子を見つけて逃げる)っげ!」

木島「俺、好きなんだろうなぁ」

三森「木島くん、好きな人いたんだ」

木島「そうそう、可愛いんだ」

三森「そ、っか」

木島「俺も今まで気づかなくてさ。でもやっぱり考えてみたら俺、いい――」

木島『待て。俺は今、誰と話してる? これは、中村の声じゃない。中村の声はこんなに可愛くない。見あげると、トイプードル。じゃなくて、いちごジャムパンとサンドイッチを手にした委員長』

橋本「へー、木島くん好きな人いたんだ。だってさ、ちぃ」

三森「亜子ちゃん、木島くんもてるんだよ。この間、ラブレターもらってたし」

橋本「へー。もてるじゃない、木島くぅん」

三森「あれ、きちんと返事してあげた?」

橋本「ふーん。ちぃは髪の毛短い人が好きだモンねぇ、木島くんはちょっと長すぎかなぁ」

三森「あっ、亜子ちゃん、なんでそんなこというの。木島くんには関係ないよ」

木島「関係、ない、ですか。……ですよね」

橋本「木島くんは、どんな女の子が好きなの?」

木島「え? 俺は――」

橋本「メガネは? ちぃみたいにあるほうが好き? ないほうが好き?」

木島「メガネ?」

木島『委員長ならあったほうが、いや、なくても好みだろうけど。橋本とかなら』

木島「ないほうが好きかな」

三森「そっか」

木島「じゃ、俺もう行くな」

木島『そう言って俺は屋上から逃げた。誰かベッドを用意してくれ。枕を涙で濡らすんだぁあ』


◆(三森サイド)バスケットコート


三森『バスケットゴールにボールを投げると、跳ね返されて戻ってきた。もう一度投げると次はボードにあたってしまう。にらんでも、ゴールが動いてくれるはずもないんだけど、にらまずにはいられない。どうして球技はこんなにも難しいんだろう』

橋本「ちぃ、まーだ?」

三森「もう少しでコツがつかめそうなの」

橋本「もう少しって、昼休み終わるわよ。屋上行くんじゃないの? いーのかなー、屋上には木島くんがいると思うんだけどなぁ」

三森「ゆ、誘惑しないで! ゴール、決めれたら、もっと自信がつく……はず! あー、また外れ」

橋本「ドンマイ。でもさ、なんでバスケ?」

三森「苦手だから、上手くなりたいの」

橋本「ふーん。ね、ちぃ、ボール貸して」

三森「はい」


◆橋本 ベンチから立ち上がりシュートする


橋本「んー、スリーポイント地点はここかなぁ? よっ――やりぃ」

三森「ぁ……入った」

橋本「あのね、ちぃ。人には向き不向きってあるでしょ」

三森「(ちょっと落ち込んで)……うん」

橋本「あたしね、自分が苦手って思ってるものには手を出さないの。どうせダメだろうって思うし、失敗とか、挫折とか、味わうの嫌いなの。だから、ちぃはすごいなって思うのよ。球技、一番苦手でしょ」

三森「わたし、できないこと多いから」

橋本「でも苦手なものに挑戦してる。そゆとこ、あたし好きよ」

三森「亜子ちゃんだって努力してるよ。わたし知ってるもん、中村くんのためにお化粧勉強してるのとか、ファッション雑誌見てるのとか」

橋本「あー、中村のためとか、ないから。それだけは絶対ない。あれは趣味――(間)――だから、恥ずかしがってない!」

三森「わたし、なにも言ってないよ」

橋本「もー、いいわよ。ほら、屋上行こ。おいてくわよ」

三森「ま、まって!」


◆三森サイド(昼休みの屋上)

 ※青文字は前のシーンの台詞を流用するので、新たに収録はしない


三森『屋上につくと、中村くんが手を振ってくれた。隣には木島くんが寝そべってる。亜子ちゃんがすごく怖い顔をすると、中村くんが脱兎のごとく逃げた。木島くんは気づいてないようで、なにかを言ってる。もう少し近づけば聞こえるんだけど』

木島「俺、好きなんだろうなぁ」

橋本「木島くん、好きな人いたんだ」

木島「そうそう、可愛いんだ」

三森「そ、っか」

木島「俺も今まで気づかなくてさ。でもやっぱり考えてみたら俺、いい――」

三森『急いでこっちを向く木島くん。なんだかマズイって顔してる。わたしが聞いちゃダメなことだったのかな』

橋本「へー、いたんだ、好きな人。だってさ、ちぃ」

三森『亜子ちゃんが支えるように抱きしめてくれるから、少しだけ自分を保てた。そうだよ、木島くんにだって好きな人くらい、いる』

三森「亜子ちゃん、木島くんだってもてるんだよ。ラブレターもらってたし、この間」 

橋本「へー。もててるじゃない、木島くぅん」

三森「あれ、きちんと返事してあげた?」

三森『こんなこと、訊きたいわけじゃなかった。でも他になんて言っていいのかわからなくて。そっか、メガネ、ないほうが好みなんだ。じゃあわたしは候補外だ。……その後は、なにを話したのかあまり覚えてない。ぐうって鳴るお腹の音は聞こえたけど、パンを食べたいとも思えなくて。頑張ってたときの自分は無駄になんかならない。バスケットだって少しはうまくなれた。自分で自分を変えようって思える、そのための目標は木島くんだから、木島くんが誰を好きでも、わたしが勝手に想うのは、迷惑じゃないよね。――ちょっと泣きそうだった』


◆次回予告


木島「夏といえば合宿。キャンプファイヤーに肝試し。さ、俺も委員長を誘って――あれ? 委員長? え、どうして? 俺、避けられてる? おい中村、肉食べてないで協力しろよ。橋本、なんで睨むんだ? ああもう、どうなってるんだよ! 次回、王子さまと委員長『すれ違う想い』お楽しみに!」

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