第二話、アイアイ傘の距離

『』 語りの部分

【】台詞の後ろで流れる部分(カットする場合もある)

「」通常の台詞

()感情説明

◆ 状況説明

○ シーン(物語の区切り)


◆ナレーション


木島「王子さまと、委員長!」

三森「第二話、アイアイ傘の距離」


◆下駄箱 


中村「そういえばさ、蓮。三森とはどうなった?」

木島「どうって、どうともなってないけど」

中村「なんで!? お前、この間まで送り迎えしてたじゃん」

木島「委員長のメガネが直るまでだったろ。そのあとは、どうなったか知らないし」

新垣【おっはよー】

関野【おはー、ぐー】

新垣【おーい、おはようくらい言ってから寝ようよ】

関野【うー、これ以上起きてたら死ぬー】

木島『一緒にいるのはメガネが直るまで。それが少し寂しくも感じたけど、これ以上なにを言えばいい? 会話が楽しくないとか、そう言うわけじゃないんだ。でも友達と話すように、心から全てが楽しいとは思えない。自分をなんだか誇張したい。年ごろの男子なら女の子の前ではカッコよくありたいと思うのが普通だろう。でも、そんな自分がなんだか恥ずかしいような。だから、どうやったって行動がおかしくなって。距離が離れて、会話をしないようになっていった』

中村「へー、三森ってどんな人だった?」

木島「どんな人っていうと――トイプードル?」

中村「それ犬じゃん」

木島「でもそんな感じだった。ふるふるして」


◆木島の下駄箱からラブレターが落ちてくる


木島「ん? なにこれ」

中村「そ、それは、まさかラブレター!?」

木島「どうしてお前がそんなに嬉しがるんだ」

中村「おまっ、馬鹿か! ラブレターもらって嬉しがらない男子がいたらそれは病気だ! いや、オカマだ! ちくしょう! なんだよ、ちょっと顔がいいからって。そうだ、わかったぞ。それは男からのラブレターだ! やーいやーい、ホモ!」

木島「喜ぶか、悔しがるか、どっちかにしろよ」

中村「(鼻をすする)悔しいです、はい。(普通に戻る)……んで、それどうするんだよ」

木島「どうって?」

中村「OKするのか?」

木島「それは――どうしようか」

中村「彼女ほしくねぇの? 好きな人がいるとか?」

木島「彼女はほしいけど……綾瀬 静香。聞いたことないな」

中村「おっま、綾瀬ってーと、お嬢さまじゃないか。清楚で儚げ、浜辺で白いワンピース着て日傘差して、犬を連れている――みたいなイメージ」

木島「お前の頭の中はどうなってるんだ?」

中村「とにかく。綾瀬と付き合うなら男子諸君を敵に回す覚悟で挑めよ」

木島「……考えとくよ」


◆教室 ホームルーム


桃谷「んじゃ、今日の授業はここまで」

矢部「起立、礼、着席」

新垣「おわったー」

関野「美咲ー、職員室つきあってー」

新垣「なにしに?」

関野「まっつんのー、カツラを飛ばしに」

新垣「ついに行くのか!」

木島「(あくび)今日も長かった」

中村「蓮、バスケやってくか?」

木島「今日はパス」

中村「そ? んじゃ矢部でも誘うか。おーい、矢部ー」

矢部「え、なに、バスケ? 中村くん、僕、手芸部だよ?」

木島『鞄を手に階段を下っていると大きなダンボールを持っている委員長が見えた。ふらふら、よろよろと見ていて危なっかしい。別に無視して帰ってもいいんだけど』

木島「持とうか?」

三森「え? あ、木島くん、今から帰るの?」

木島「のつもりだけど……持つよ」

三森「いいよ。わたし持てるから」

木島「見てるこっちの気が気じゃないから。どこまで?」

三森「……教室まで」

木島「ん」

三森「はー」

木島「なに?」

三森「え、や、しゃべるの、久しぶりだなって思って。重くない?」

木島「重くないよ」

三森「そういえば、ラブレターもらったんだって?」

木島「知ってたんだ」

三森「あ、や、あの、中村くんが教えてくれたの」

木島「――仲いいの?」

三森「え?」

木島「中村と」

三森「今日はお昼に購買部のところで会ったんだ。わたしいつもパンだから」

木島「別に、手紙がラブレターだって決まったわけじゃないし」

三森「中身、見てないの?」

木島「なんか、見づらいから。――気になる?」

三森「え!? そんなこと、ないよ。ちょっとしか」

木島「(苦笑)気になるんじゃないか。ほら、到着」

三森「ありがとう」

木島「いえいえ」


◆教室につくと雨が降ってくる


三森「あ……雨」

木島「天気予報はあてにならない、か。――委員長」

三森「(心ここにあらず)う、ん」

木島「委員長、今日の用事はこれで終わり?」

三森「(心ここにあらず)うん」

木島「じゃ、一緒に帰ろう」

三森「へ?」

木島「ほら、鞄とって来る。おいてくぞ」

三森「あ、ま、まって」


◆通学路で木島・三森・橋本・中村が下校中


三森「あの、木島くん。わたし、道路側でいいよ?」

木島「それはダメ」

三森「どうして?」

木島「俺が男の子だから」

橋本「だってさ、中村」

中村「亜子は男女だから大丈夫!」

橋本「ざけんじゃないわよ、あたしはれっきとした女よ! あと勝手に名前で呼ばないで」

中村「俺と亜子の仲じゃなぁい」

橋本「……キモイ、うざい、どんな仲よ」

中村「一緒に風呂、入ったじゃん」

橋本「あれは……アンタが女子風呂を覗きにきたんでしょうが!!」

中村「もう、美人だけど、それを上回って男らしいからなぁ亜子は。そんな君にフォーリンラブ!」

橋本「キモイって言ってるでしょ! てか納得いかないわ! どうしてちぃは木島くんの傘に入ってるの? ここは女同士、あたしの傘に入るのがどおりってものじゃない?」

三森「亜子ちゃん……でも」

木島「橋本の傘のサイズじゃ、どっちかが濡れるだろう?」

中村「蓮が三森と一緒なのは家が同じ方面だから。そういう俺と亜子も家が同じ方面!」

橋本「……サイアク」

中村「そう言わないで、つれないお人。一緒に帰ろうぜ、亜子ちゃん」

橋本「名前で呼ぶなっ! ちゃん付けるな!」

三森「亜子ちゃん、楽しそうだなぁ。……名前かぁ」

木島「委員長、ちぃって呼ばれたいの?」 

三森「え!?」

木島「……え?」

三森「え、や、えっと、な、なんでも、ないです」

木島「あ、ごめん、委員長は委員長だよな」

三森「ちがうよ。木島くんはいつもわたしのこと委員長って呼ぶから。驚いただけで」

木島「委員長だって俺のこと、いつも木島くんって呼ぶな」

三森「蓮くんのほうがいい?」

木島「あー」

三森「耳が赤いよ、蓮くん」

木島「確信犯ですか、委員長」

三森「さっきのお返し」

中村「(気持ち悪く)うーふーふー」

木島「中村、顔が気持ち悪いからそれ以上近づくな」

中村「よしわかった。俺と亜子はこれから別の道をいく! だから蓮、ファイト!」

橋本「えっ? ちょ、中村!? あたしまだ」

中村「ええい、亜子は黙ってなさい! 蓮、頑張るんだぞ」

木島「あ、おい! なにを頑張るって――もういないし」

三森「中村くん、面白いね」

木島「そう、だな――委員長、俺が自転車で帰ったらどうするつもりだった?」

三森「うーん、走るかな」

木島「家まで? それじゃかなり濡れるだろ」

三森「じゃ、雨がやむまで待つとか」

木島「やまなかったら?」

三森「そのときは……やっぱり走る?」

木島「誰かの傘に入れてもらうっていう選択肢はないんだ」

三森「うーん、迷惑だしね」

木島「そっか。そういえば、あの荷物はなんだったんだ? ほら、ダンボールに入ってた」

三森「あれは、ポスター作ろうと思って。クラブ、作ったんだけど、まだ部員が足りなくて」

木島「5人以上いないと部にならないんだっけ」

三森「そう! だから、いつでも部員募集中です! 今はわたしと亜子ちゃんだけなの」

木島「……なんのクラブ?」

三森「演劇部!」

木島「え、えんげきぶ? 煌びやかな衣装を着て、メイクバッチリな男装の麗人が出てくる」

三森「それは宝塚だよ。ねぇ木島くん、演劇に興味ない?」 

木島『笑顔が、いつもは控えめな笑顔が俺に向けられている。興味ないなんて、言えるわけがない。せっかくできた会話のチャンス。断るなんて、断るなんて。――俺は馬鹿だ』


◆三森サイド2

 ※青文字は前のシーンの台詞を流用するので、新たに収録はしない


三森『ジョンがジョン二号になってから、木島くんと話をすることがなくなった。一緒にいれた間、少しは仲良くなれたと思ったけど、それでもなにも話題がないまま話しかける勇気はなかった』

橋本「ちぃ、メガネ直ったの」

三森「うん、この子はジョン二号」

橋本「……ちぃのメガネって、全部ジョンになるの?」

三森「(心ここにあらず)うん」

橋本「おーい、ちぃ? あ、あれ、木島くんじゃない?」

三森「そうだね。……楽しそうだなぁ」

橋本「(笑う)ね、ちぃ見て、木島くんの髪。横のほう跳ねてる」

三森「寝坊したのかな。あ、亜子ちゃん、わたし髪、大丈夫? 跳ねてない? 変なところない?」

橋本「ちぃは大丈夫よ。跳ねててもあたしが直してあげるから」

中村【おはよう蓮ちゃーん。宿題みーせてv】

木島【中村、またやってきてないのか?】

中村【木島大先生がいるのになぜ俺が!?】

木島【絶対に見せない】

中村【あー、そんな殺生なー! 待てって蓮ー】

三森「……仲よさそう。いいなぁ」

橋本「はい?」

三森「! な、なんでもないよ」

三森『もう話す機会もないんだし、いつまでも見てるのは失礼。そんな理由をこじつけて木島くんから視線を外した。話す機会がないなら、いつかは忘れる。そう思っていたのに……』

木島「見てるこっちの気が気じゃないから。どこまで?」

三森「……教室まで」

木島「ん」

三森『うなずくと、木島くんは軽々とダンボールを持ち上げてしまう。見上げると、綺麗な顔が見えた。男の人に言うのもどうかと思うけど、美人さんだ。いろいろ話したかったけど、短い距離だからすぐ教室についてしまって、残念だなって思った』

三森「あ……雨」

木島「天気予報はあてにならない、か。――委員長」

三森「(心ここにあらず)う、ん」

三森『傘持ってきてないのに……走るしかないかなぁ。お姫さまがピンチのときは王子さまが現れて、カッコよく助けてくれるけど。雨の中、迎えにきてくれるのはお母さんくらい。でも今日はバーゲンの日だし。大丈夫かなお母さん、濡れてないといいんだけど』

木島「委員長、今日の用事はこれで終わり?」

三森「うん」

木島「じゃ、一緒に帰ろう」

三森『いなきり腕をとられ、微笑まれてしまった。……まずいよ、顔が赤くなる。どうしてそんなこと言ってくれるのかとか、やさしいのが嬉しいとか、でも恥ずかしいとか、全部顔に出そうで』

木島「ほら、鞄とって来る。おいてくぞ」

三森「あ、ま、まって」

三森『急ぐふりをして鞄を取りに走るとき、喜びで緩んでいる顔を見られてないか、それだけが心配だった』


◆(三森サイド)通学路で木島・三森・橋本・中村が下校中

 ※青文字は前のシーンの台詞を流用するので、新たに収録はしない


三森『一緒の傘に入って帰る。靴を履き替える前によったトイレの鏡では、変な箇所なかったはず。匂いとかも、臭くない。髪、跳ねてない。リボン、歪んでない。よし!』

木島「委員長、ちぃって呼ばれたいのか?」 

三森「え!?」

木島「……え?」

三森「え、や、えっと、な、なんでも、ないです」

三森『名前、呼んでもらっちゃった。反撃として蓮くんって呼んでみると、木島くんも照れた。そんな些細なことに、木島くんのほうを向いちゃう視線を外すのが大変で。わたしのこと、見てくれるはずないってわかってるけど、溢れてくる嬉しさはとまらなくて。もしわたしがもっと綺麗で、自分に自信があったら蓮くんの傍にいることに、ためらいなんて覚えなかった。けどそんな勇気はなくて、他の人にも同じように優しいんだろうなって、そんなことを考えたら少しだけ胸が痛んだ』


◆次回予告


三森「やっ! とうぉ! はーいれっ! あー、ダメ、入らない。どうしてバスケってこんなに難しいんだろう? あのゴール、小さいよね。もうちょっと大きかったら入るのに。ゴール、入ったら、自信つくよね。自信がついたら傍にいること、迷わないよね。次回、王子さまと委員長『ゴールに懸けた願い』お楽しみに!」

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