第3話



 顔を覗かせると陸議りくぎが暖炉の前の横椅子に寝そべっていた。

 三日目だがすっかり定位置になっていて、猫のようにいつもその気に入った場所にいるので、徐庶じょしょは少し笑ってしまった。


 彼はそこでウトウトしている時もあれば熟睡している時もあるし、起きているが静かに目を閉じているだけの時もあった。

 今は目を閉じているが眠っているわけではなく、何か少しだけ微笑んでいるように口元が緩んでいるように見えた。

 

 天水てんすい砦では見なかった表情のように思えて、少し徐庶はその不思議な表情を見つめた。


 しかし数秒するとこのまま人が寛いでいるのを眺めているのも無粋なので、驚かさないようにまずそこにあった柱を軽く叩いて音を出した。

 それから顔を出すと陸議の琥珀の瞳が目を覚まし、こちらを見ている。


「徐庶さん」

 陸議りくぎはもたれかかっていた所から身を起こした。


「腕の具合はどう?」


 ああ、と自分の腕をそっと押さえて、陸議は微笑む。


「大丈夫です。天水砦を発ってから、一度も痛みに魘されて起きるようなことはなかったですし、この家に来てからも。ゆっくり休ませることが出来ています」


 確かに、天水砦では不安げな表情も見せていたが、今は陸議の表情は穏やかだった。


「よかった。今日は天気もいいし、これから【九条院くじょういん】に行ってこようかと思って。

 それで、君も九条院は見たことないって言ってたから、体調が良かったらどうかな」


 徐庶がそう言うと、陸議の瞳が輝いた。



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