バズーカ王国物語
臥龍(がりゅう)
第一章
わしの名前はガリュ㌧――。
豚の中の豚、いや、物語を語らせれば右に出る者はおらん……と自分では思っておる古豚じゃ。
さて、聞くがよい。
これは、一人の名もなき子と、9mm(比喩)のちっぽけなバズーカを抱えた豚との出会いから始まる、バズーカ王国の物語である。
……ああ、話が長くなる? まあまあ、黙って耳を貸せばよいのじゃ。
⸻
雨の石畳
その夜は、冷たい雨が石畳を打ちつけておった。
まるで天が涙を流しておるかのようにな。
巡幸の馬車が通りかかり、王と妃が姿を見せる。
そこで見つけたのは、ぐったりと横たわる小さな子。
妃が不安げに囁いた。
「……今度の子は、どうでしょうね?」
王は眉をひそめつつも、その子を抱き上げて答えた。
「分からぬ。だが、信じよう。あの方の言葉を」
……そう、あの『豚のおじさん』の言葉を。
人々は「慈悲深い王」と称えたが、真実はもっと深いところにあるのじゃ。
⸻
国を覆う影(長話注意)
ここで少し長くなるが、辛抱して聞け。
この国は一見平和に見えるが、影では不穏な噂が渦巻いておった。
「大魔王」を名乗る得体の知れぬ者が、「豚の召喚士」を探しておる……とな。
豚の召喚士とはバズーカ王国建国の礎を築いた存在。
もしその力を奪われれば、国など砂上の楼閣よ。
実際、微かな情報を頼りに無辜の者が襲われる事件もあった。
……おっと、焦るでない。
その辺りが、過去のあの子の義父母の不遇の死につながるのじゃが、今はここまでにしておこう。
だからこそ王は巡幸を繰り返し、孤児を拾っては育てた。
豚のおじさんの言葉――伝説の子を助けよ。
それを信じることが、この国を守る唯一の道と考えたのじゃ。
さらに王は軍備にも余念がなかった。
マン㌧三銃士を鍛え、国を守る剣を磨いておった。
王女・ロマ子姫はオッドアイを持ち、その姿は古き言い伝えと合致していた。
ゆえに姫の周りには親衛隊が組まれ、固く守られておった。
……ふむ、やはり話が長くなったか。
まあ要するに、この国は嵐の前の静けさ。
そしてこの少年との出会いが、その嵐を呼ぶ最初の一歩であった、ということじゃ。
⸻
下男の宿舎
さて、少年が次に目を覚ましたのは城の下男の宿舎。
華美ではない。じゃが、腹を満たす食事があり、清潔な寝床がある。
わしからすれば「贅沢を言うな」と鼻で笑いたくなるが、孤児にとっては夢のような環境じゃったろう。
仲間の子らが「また来たか」と冷ややかに見やる。
年長の子が肩をすくめて言った。
「ここは下男の宿舎だ。お前も今日から仲間だ」
彼らの日々は規則正しい。
早朝から掃除や薪運び、馬小屋の世話。
年長は兵の訓練の手伝いもする。
働きぶりに応じて少額のお給金も出る。
……まあ、わしに言わせれば子供に銅貨を握らせたところで無駄遣いをするに決まっておるが、本人たちには初めての誇りとなるのじゃ。
⸻
仲間との笑い
ある夜、下男たちは姫の噂で盛り上がっていた。
「姫様は可愛いらしいらしいぞ!」
「親衛隊に入ってお近づきになりたいな!」
中の一人が胸を張って叫ぶ。
「オレはいつか姫をモノにする!」
……そこでじゃ。
例の少年が、意味も分からず真似をしてしまったのじゃ。
「……姫を、モノにする!」
場は一瞬凍りつき、すぐに大爆笑。
年長が怒鳴った。
「バカ! お前にゃ早え!」
笑いに包まれ、少年は真っ赤になった。
だが、不思議なことに心は温かかったのじゃ。
仲間と笑い合えたのだからな。
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ロマオ王子の噂
やがて話題は、姫の双子の弟――ロマオ王子へ。
「この前、城下町で見た! 娘子に声かけてたぞ!」
「チャラいなぁ、あの人!」
「でも剣はすごいって聞いた。三銃士でも勝てないんだろ?」
「見たことある! 稽古場で三銃士の剣をひょいっとかわして、すぐに弾き落としたんだ!」
ふん、わしも見たことがあるが……あれは本物じゃ。
普段はチャラチャラして娘子に声をかけて回るくせに、剣を握れば人が変わったようになる。
わしならどちらか一つで満足するが、世の中うまくできておるものよ。
⸻
ロマオ王子との邂逅
ついにその本人が現れた。
陽気な笑みを浮かべて、下男たちに声をかける。
「よお、お前ら! 旅に出る準備をしててさ。地下から荷を運び出してくれないか?」
下男たちが慌ててうなずくと、王子はふと例の少年を見やった。
「ん? お前も行くか?」
……軽口の一言。
じゃが、それこそが少年を運命の地下へと導くことになったのじゃ。
⸻
地下ではぐれる
地下は冷たく暗く、少年はやがて仲間とはぐれた。
水滴の音が響き、心細さは倍増する。
「……だ、誰か……」
声は虚しく闇に溶ける。
まったく、わしが見ていてもぞっとするほどの孤独じゃった。
⸻
バズ㌧との出会い
その時じゃ。
闇を裂くように、小さな光がきらめいた。
少年は震える声で問うた。
「……君は、誰なの?」
光はぷいっと胸を張り、元気いっぱいに答えた。
「僕、バズ㌧!」
ああ、聞くたびに思う。
短いくせに妙に耳に残る名乗りよ。
この瞬間が、すべての始まりじゃったのだ。
⸻
結び
こうして、名もなき子と小さな豚――バズ㌧の物語が幕を開けたのじゃ。
わし? わしはその一部始終を語る役目を仰せつかっただけよ。
……まあ、話が長いと嫌がられても語るがな。
次なる章を楽しみに待つがよい。
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