ランクマッチ、ランダマイズ

秋乃光

この世界のどこかにいるあなたの話

 毎日続けていたのに、ぷっつりとやめてしまうことがある。私が『熱しやすく冷めやすい』からだろう。


 流行りのゲームをスマホに入れる。しばらくはプレイしているが、何かの拍子にふとやめてしまう。続けられる期間はまちまちだ。一週間ぐらいで飽きてしまうものがあれば、そのゲームのプレイヤーと交流するためにSNSのアカウントを作ったり、リアルイベントに参加したりと積極的にプレイしていても、突然やめてしまうこともある。


 特にこれといった理由はない。


 つまらない、わけではない。なんとなく、気持ちがらなくなって、ログインしなくなる。課金したお金は戻ってこないが、これは『お布施』のようなものだ。面白いゲームを作ってくれる会社には、ぜひ、これからも面白いゲームを作り続けてほしい。


 グッズも売ってしまう。見かけたときは「欲しい!」と感じて、衝動買いするけれど、ゲームをやめてしまう私の部屋でほこりを被るよりは、このゲームをまだ好きな人の部屋にあったほうがいい。何度も売りに来ているから、あのメガネの男性店員さんは、私の顔を覚えただろうな。いつもこの人だし。きっと「今度はこれかあ」と思っているだろう。


 またいつか、このゲームがやりたくなることがあるかも、と、アンインストールはしない。アカウントも、そのままにしている。そうこうしているうちにゲームのほうがサービス終了してしまって、一生『またいつか』ができなくなってしまったことも、多々あった。


「ふーん」


 何気なくSNSを見ていたら、とあるFPSゲームが『七周年』を迎えたらしい。パソコン版で人気のあったゲームの、スマホ版。日本でのサービス開始直後に始めて、ランクマッチをやりこんでいた。


 このゲームには四人一組のチーム戦がある。ここでチームになった三人と意気投合して、以降はSNSで連絡を取り合うような仲になった。小さい頃からいっしょに遊んでいたかのように連携が取れて、やりやすかったのを覚えている。


 なんでやめちゃったんだっけ?


「ちょっと、やってみようかな」


 私は久しぶりにログインし、イヤホンを装着した。しばらく起動していなかったぶんのアップデートが始まって、懐かしい画面に変わる。……こういう感じだったっけ。


 フレンド欄に、かつてのゲーム仲間の名前が光っている。

 私がどこからメッセージを送るのか思い出せずにあたふたしているうちに、一人から『久しぶり!』というメッセージが届いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ランクマッチ、ランダマイズ 秋乃光 @EM_Akino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ