第10話
一年後、エルはギルドの職員試験を受け無事合格した。
貴族であるエルだが兵世の四賢者の改革によって貴族の立場がなくなりかけていることもあり就職の道を選んだ。
最初のうちは毎日がてんてこ舞いであった。
それでもとても充実していた。
「あ、ジュエリーさん、悪いけどそこの書類手伝って貰える?」
「了解ですわ」
同期の同僚にサヤという青年がいる。
彼とは学園では全く話すことがなかったがなんだか一緒にいることが心地良く、よく行動を供が多い。
エルは体が弱いのでお誘い自体はありはするのだが仕事終わりに飲みに行くことは無かった。
一応貴族の為、一度断ればしつこくはされないので貴族でよかったと実感する。
それとは逆に貴族であるしがらみにもだいぶ苦労させられて来たのだがまぁ、それはそれと思える強さを今のエルは持っている。
サヤもお酒が苦手なのか飲み会に行くことは滅多になく、よく二人で帰るのが最近の日常である。
「えっ、サヤ君Cランクですの!?」
「学園での成績で貰った奴だしやっぱ下位の方からこつこつ上がった人には適わないけどね」
「学園で貰ったCランクはそんな軽いものではありませんわ!」
「ちなみにジュエリーさんは?」
「そ、その私実技の方が……」
「あぁ、運動音痴で不器用なんだね」
「失礼ですのー!!」
まるで見てきたかのようにばっさりと言ったサヤに憤慨するエル。
学園ではそれなりに有名な方だったし実際に見て知っていたのかもしれないが、それでも少しばかり失礼であるためプンスカする。
「ははは、ごめんて」
「私、こう見えても貴族なんですのよ? 不敬罪で処しちゃうかもしれませんわ」
「誠心誠意謝らせて頂きます」
「……ふふっ。手のひら返しが早いですの」
「流石に処されちゃたまんないからね」
お互いにちゃんと冗談だと分かりきっているため、とても和やかである。
貴族ジョークをジョークとして言えるだけの柔軟さや周囲にジョークだと受け入れてもらえるのも真面目一辺倒……というより貴族主義一辺倒には育たなかったエルの頑張りの成果のひとつではある。
それにしても不思議とサヤのにこやかな笑顔をみているだけで心が暖かくなってくる。
この暖かさを感じれることを含め、エルは生きてきた中で一番幸せ満たされていた。
これが恋なのかなぁともなんとなく思っていた。
だが恋と考えるたびにズキンと胸が痛み、もやがかかってよくわからない人影が頭をよぎるのだった。
その痛みとは別に体の方が限界に近いこともうすうす感じ始めていた……。
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