第2話 ノーパン湯めぐりや全裸瞬間移動してしまう温泉マニア男女

 温泉マニアというのは、とにかく数多くの温泉に入りたいものです。

 

 温泉マニアが旅に出れば、1日に5~10湯以上の温泉に入るのは当たり前です。

 

 私の最高記録は、おんせん県である大分県の別府温泉で、日に20湯が記録ですが、もっと数多く巡る猛者もおられます。


 私は、20湯を狙っていたわけではなくて、体力と気力の続く限り巡っているうちに20湯を達成しました。行き当たりばったりで達成したのですが、温泉マニアの世界では、行きたい温泉を事前に下調べしたうえで緻密にプランニングするタイプのほうが圧倒的に多いように思います。


 そんな緻密なプランニング派の温泉マニアの中でも、かなり几帳面に分刻みのスケジュール管理をするAさんのお話です。


 経営者でもあるAさんはA型らしくとても几帳面な性格で、1湯あたりに約15~20分で予定を組むそうです。その時間には、衣類の着脱時間も込みなので、彼は高速で脱衣できます。一般的に温泉マニアは着脱しやすい衣類を心がけていますが、彼のスピードは、アキラ100%のお盆芸並みです。


 そんなAさんが、真冬に長野県渋温泉の旅に出た時、K旅館に日帰り入浴しました。


 しっかり下調べをしていたAさんですが、ここで嬉しい誤算がありました。




 K旅館には浴場が5つもあり、しかも源泉違いだったのです!



 女将さんが入浴料500円さえ払えば、他に誰もお客さんがいないことと制限時間1時間以内という条件付きで、なんと5つの浴場全てに入ってもいいとのことだったのです。


さらに「今はちょうど誰もいないので全部入っていいですよ」



これに大喜びしたAさん。日帰り入浴料金で、5つの浴場、しかも源泉違いの温泉に

入ることができる!!


めちゃめちゃお得!!!


即決で500円を支払うAさん。既に半分脱ぎかけていたとかいないとか、、、。


K旅館にある5つの浴場の内訳は以下の通り。


男女別大浴場が各1に貸し切り風呂4か所。


この5つに1時間で全部入るには1浴場あたり12分以内で回らなければならないのでかなり厳しい状況。


でも、そこは百戦錬磨の温泉マニアAさん。作戦を立てます。


最初にフロントからいちばん遠い浴場に向かい、そこから順に戻りながら入っていくことにしました。


 フロントからいちばん遠いのは「男女別大浴場」。人気のない廊下を早足で進みながら、ダウンジャケット等の上着を脱いでいきます。


 棚とカゴがあるだけの脱衣場。自慢の高速脱衣を繰り出して、あっという間に全裸に。


 旅館のホームページによると、この大浴場で使用している源泉は単純泉の自家源泉。


 大喜びで、仕切られたかわいらしいタイル貼りの浴槽を撮影。49度ある自家源泉は奥側の湯溜め槽である程度冷却されてから浴槽に投入されている様子。もちろん完全な源泉かけ流しです。


透き通ったお湯をテイスティングし、温度、PHを測定、メモをしていきます。


 そう、温泉マニアは忙しいのです。


ぬるめ浴槽は41.5℃。熱め浴槽は41.8℃。差がちょっとやん!とツッコミつつ、単純泉らしい軽いツルスベ感のある浴感を楽しんでいると、時間が15分経過!


撮影とメモ、自撮りもしているので、どうしても時間がかかるのです。



このままのペースでは5つ全部入れない!


服を脱いだり着たりする時間がもったいない!


ということで、他に誰もいないことをいいことに下はパンツだけを穿いて上半身マッパで移動を開始するAさん。


老舗旅館の静まりかえった廊下にパンツ1丁でダッシュする貫禄のあるおじさん。シュールな絵。静寂の中、軽快な足音だけが響きます。


もし他にお客さんが来て見つかったら、そして、それが女性客だったりしたら、大事になっていたかも知れませんね。


「安心してください、穿いてますよ!」で済むのかどうか(笑)



残りは貸し切り風呂4つ。


撮影はパンイチ、または全裸で。テンションの上がったAさんの気分は全裸監督です(笑)。


こちらは混合泉で、自家源泉と引き湯をブレンドして適温にしています。


木製の浴室・浴槽の風情、庭園風の半露天風呂を楽しみます。


お湯の色はほんのりと黄味がかって見え、白い湯の花が舞っていました。


浴場の設え、お湯の個性をゆっくり楽しむ余裕はなく、時間が気になります。


さあ、また、パンイチダッシュで次の浴場へ!


3つめは「家族風呂」で、貸切です。こちらは2源泉を混合した含石膏食塩泉。


お湯の色は無色透明。ブレンドして変化するのが不思議です。浴槽内温度は42℃足らず。見事な湯守仕事で適温です。


ちゃんと入浴しましたよ、という証拠写真を撮影して、しっかりメモしてまたまたパンイチダッシュで移動!


かなりフロントの近くまで戻って来ました。ガラス扉の向こうに2つの貸し切り風呂があります。



廊下を挟んで向かい合う2つの浴場。 これを見て、きらりと目を光らせるAさん。


まずは4つめの浴場へ。残り15分、時間がない!


こちらも混合泉で、ナトリウム・カルシウム-硝酸塩・塩化物泉。



浴槽のサイズが1人~2人で入るにはちょうどいい感じ。こちらも半露天風呂。


こちらのお湯もごく薄く黄濁しているように見えます。湯の花も舞っていました。

浴槽内温度は44.3℃。熱めです。証拠写真を撮影して、残り10分を切った時、Aさんはひらめきました。


次に目指す、5つ目、最後の貸し切り露天風呂は廊下のすぐ向かい側。


距離にして1mくらいのものでしょう。


よし、と気合を入れるAさん。


ここは思い切ってパンツすら穿かずフルチンで瞬間移動!


瞬間移動の途中、全裸のまま立ち止まって浴場入口を撮影(笑)

(通報レベル!)


5つめの「庭園露天風呂」の脱衣場に無事に滑り込みセーフ!!!(何が?笑)



HPによると、「地獄谷から引湯した荒井河原の湯を満たした貸切庭園露天風呂(Na,Cl、塩化物泉)毎分約25リットル*55度c」と記載されています。


浴槽は2槽式。湯口のある右側が「熱め」で左側が「ぬるめ」で、右側の浴槽から左側の浴槽へとお湯が流れ込んでいます。


ぬるめが41.3℃。


湯口のある熱めが46.2℃。


残り時間のギリギリまでこちらにつかって、1時間5本勝負を終えたAさん。


ひとつの旅館の中でいろんな浴場に、そして、源泉違いのお湯に入れるお得感に大満足されたうえ、パンイチ移動、全裸瞬間移動という新たな技もマスターされ、またひとつ温泉マニアの階段を登られました。


 この話に触発されたBさん(女性)は、Aさんとは違い、老舗旅館に泊まってご当地の美味しいものを食べつつ、1湯(1宿)をしっかり味わう正統派?の温泉マニア。

 九州出身の彼女に、「今度、熊本県に行くのですが、Bさんが熊本県で一番好きな温泉宿はどこですか?」と聞くと、「黒川温泉の洞窟風呂で有名なSさん」と返答されたエピソードから、いかに正統派の温泉マニアだということかがわかると思います。ちなみに私が熊本県で一番好きな温泉宿は、コテージのキッチンの蛇口から源泉の出るリーズナブルな貸別荘Kです。


 1日1湯を満喫するのを座右の銘としている彼女ですが、渋温泉では、宿泊者限定の9湯の外湯巡りがあるので、これにチャレンジしたのです。


 渋温泉の超有名旅館K屋さんに泊まったBさん。K屋さんには大浴場と貸し切り風呂を合わせて8か所もの浴場があるので、宿での湯めぐりが忙しいが、宿泊者だけがチャレンジできる9湯めぐりにも挑戦したいということで、宿の浴衣でチャレンジを開始。


 ふだんからナチュラルで上品なメイクのBさんですが、ここではメイク直し等一切せず、ガチでお湯と向き合います。今年の夏は、涼しいはずの長野県でも猛暑なうえ、高温の外湯巡りなので、汗が半端なく出ます。


 旅館の浴場巡りや夕食時間も気になって、だんだん時間が押してきた時、Aさんの話を思いだし、思い切った行動に出るBさん。


 パンツを履くのをやめたのです。ノーパン外湯巡りです。


 後半5湯はノーパン、浴衣のみで巡り、1時間ちょっとで9湯という快挙を達成。


 9湯巡って、渋高薬師へ参拝するため、石段を登っている時には、下から風が吹いて浴衣がめくれ上がらないか、ハラハラしたそうです。


 とても上品なセレブなBさん、恰幅の良い紳士的なAさん、それぞれをノーパン湯めぐりや全裸瞬間移動させてしまう渋温泉には、温泉マニアの心をつかんで離さない魔力があると思います。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る