第6話 友情と恋愛の間で
ある日、二人で公園を散歩していた。
春の風が心地よく、桜の花びらが舞っていた。平日の昼間で人も少なく、穏やかな時間が流れていた。
「ねえ健二、最近考えたんだけどさ」
美咲がふと足を止めた。
「なんだ?」
「男と女だからって、必ず恋愛しなきゃいけないわけじゃないでしょ?」
健二は意外そうに美咲を見た。
「……まあ、そうだな」
「周りは気にするみたいだけど、私たちはそういうのじゃないじゃない?」
「そういうのって……何だ?」
「恋愛とか、夫婦とか。私たちはそれとは違う。でも、ただの友達とも違う気がする」
美咲は桜の木を見上げながら、静かに言葉を続けた。
「たぶん、私たちの関係って、そういう枠組みじゃ測れないのよ」
健二はしばらく黙っていた。周りがどう思おうと、自分たちが心地よく暮らせているならそれでいい——そう思っていた。
「……そうだな」
彼は静かに頷いた。
「お前と俺は、お前と俺だ。それだけだろ」
美咲は健二の言葉を聞いて、ふっと笑った。
「そうね。それだけでいいのかもね」
桜の花びらが二人の間を舞い落ちる。
恋愛という形ではない。でも、ただの友達とも違う。
それでも、二人の関係はここにある。
それで、十分だった。
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