まずは騙されたと思って第1話を読んでもらいたいです。その衝撃的な引きからあれよあれよとリバーサイドの世界に引き込まれてしまうはずです。
本作は短編連作の形をとり、同じ川辺に住む人々がそれぞれの人生を送りながら少しずつ交差していくお話が続きます。
同棲していた彼女が既婚者だった話。
新興宗教を信じる親の元に生まれてしまった少女の話。
酒造で始まる大人の恋の話。
離婚後に和菓子屋を手伝う女性の話。
老人ホームでバイトする双子の弟のことを知っていく兄の話。
それぞれのお話は柔らかく絡み合いますが決して干渉せず、中心を流れる川のようにあるがままを優しく映しています。ただほのぼのしているだけでなく、各自の悲しみも人の優しさもぎゅっと詰まっていて「人間」って良いものだなと思います。
本作の特長はリアルな人間模様の他に、そこに登場する様々な食べ物の描写です。生活の一部として登場する料理はとても美味しそうなものが多く、特に和菓子屋の話で登場する「裏メニュー」のエピソードは美味しさとは何か、ということがたっぷり詰まっています。他にもたくさん美味しそうなシーンがありますが、和菓子屋の娘が考える美味しい大福の食べ方については是非読んでいただきたいです。
ラストはふわりと、暖かい風が吹くように読んだ人の心にも春がやってくるような心地がありました。もっともっと多くの方に読んでいただきたいと思います。
恋人が既婚者だった男、宗教二世の少女、運命の恋に戸惑う女性、モラハラ離婚の傷が癒えぬ女性、双子の弟と比較してしまう兄など、様々な淀みを抱える人々が、己の人生と向き合って生きていくオムニバス形式の物語です。
穏やかにきらめく春の川のような日常は、ただ流れていく。悲しみや苦しみを湛えてもなお、川面はやわらかく揺らめくばかりで。
けれど流れていくうちに気づくこともあって。それは大切な人との出会いであったり、すぐそばにいた人たちを大切だと再認識することであったり。
川の流れとともに静かな人生をいくつも俯瞰しながら、各章の主人公とともに駆け抜けた気分です。
大ぶりの花束や可愛くまとめたブーケじゃなく、ただコップに差した一輪のような何でもない花、けれどそれを囲む相手は他の誰でもなくあなたが良い、と強く感じさせてくれる作品です。
大人のエモさはここにあります。
非常に読み心地のいい作品でした。
流れを止めたくない、と思いました。ひとつひとつの言葉をじっくり胸に沁み込ませながら、お話の流れを追っていきたいと。
一気読みとも違う。静かに心を整えて、きちんと向き合いたいなと思えるような文章でした。
川沿いを舞台に、さまざまな人の人生が緩やかに寄り添ったり離れたりするオムニバスです。
三年間付き合っている彼女が既婚者だと知った人。
宗教二世の人。
平凡な日常の中で運命の相手に出会った人。
離婚後、道に迷ったままの人。
そして老人介護施設の魔女たちと、介護士の青年。
おそらく、他人から見ても分からないくらいの動揺や苦しさや浮き沈み、世間とのズレや生きづらさなんかが、淡々とした、だけどすうっと胸に馴染む筆致で綴られていきます。
日によってさまざまな表情を見せながら、止まることなくただただ流れていく川のように、人生は続いていきます。
良い日もある。あんまり良くない日もある。先が見えない日もある。
でも、いつか振り返って、良かった日のことを思い出せたらいい。
晴れやかであたたかいラストシーンに、未来への希望を見ました。
書籍で手元に置いておきたいと思える作品です。もっと多くの方に読まれますように!
二章「護岸」2−2までを読んだ感想です。いつもは完結後にレビューするのですが、この作品は今すぐ書きたい欲に駆られてしまいました。
しっとりと、じんわりと、ひと言も見落としたくないほど、身体に染み込むような文章に惹き込まれています。
まだ連載中なので内容に触れることはあまりできませんが、まずは一章「サニーサイド」は同棲中のカップルのお話。ふと彼女が放った衝撃の事実は平穏な日常を崩壊させていってしまうのか。それは読んでのお楽しみですが、ハラハラする展開も心地よく読めてしまうんです。不思議なほどに。
二章「護岸」はがらりと変わり、ネグレクトを受ける少女の物語。こちらは序盤ですが連作短編とのことで、どのように絡まっていくのか楽しみです。
たとえ絡まらなかったとしても、読んでるだけで幸せに浸れちゃうんですけれども。
(読了後追記)
三〜五章、より私好みの物語でした。
大人同士のおだやかな恋のはじまり。
結婚生活を終わらせた女性のむなしさと、ゆるやかに回復していく感情。
ラスト五章では、幕間での語り手である青年ララくんの双子の兄キキくんがこれまでの登場人物たちと触れ合いながら、少しばかり弟と自分を比べちゃったり……なエピソードです。
この五章のまとめ方がとても、とっっっても素晴らしかった。川べりの小さな街で、すれちがったことのある人もいれば、まったく見知らぬ人だっている。
そんなあたり前の風景が絶妙なさじ加減で描かれ、オムニバスの醍醐味をたっぷりと味わうことができます。ああ、本当に楽しかった。
カクヨムコン11ではいくつか長編を拝読しましたが、その中でも1、2を争うおすすめ作品です。ぜひお楽しみください!