[短編小説]サギ

@ruvaruva0107

サギ

私が学校から帰る途中に、そこにサギがいた、それだけの筈だった。

私はなぜかそのサギに妙に感情移入をした。

たった1羽で田んぼの真ん中にいるなんの変哲もないサギ、それが私には何かショックを受けてトボトボ一人で歩く社会人のようにも見えた。サギは普通集団の中で行動するはずなのに、そのサギはたった1羽で歩いていた。

少しでも助けになれないか、という意味のわからない使命感に駆られ、自転車から降りて近付いたが、サギは「1人にしてくれ」といわんばかりに飛んで行ってしまった。

だがそのサギは特段遠くに向かうわけでもなく、近くの住宅の前にそのサギは、ただ黙ってその前に佇んでいるだけであった。

その姿が印象的で、まるで前世ではそこに住んでいたかのように、懐かしむような、悲しむような、そんな表情をしていた。

私は少し離れたところからただ見守ることしかできなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

[短編小説]サギ @ruvaruva0107

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ