作家になりたかった作家の話

umi

第1話 作家を辞めきれなかった作家の話

暖色のLEDの明かりに、うっすらと照らされたトイレの中で私はまた筆をとった。


私の心の中にいつも漠然とした“不安”が付き纏う、一体、何を不安に思っているのだろうか。


あるいは、これは現状に対する“不満”なのだろうか。


組織の一部になることへの“不安”、社会の一部になることへの“不満”。


しかし読者諸君は私がこの“不安”と“不満”に塗れ、立ち止まることを許してはくれないだろう。


読者諸君はここから私がどうするのか、その先に興味があるはずだ。


なら、攻略してみせようじゃないか。


私は作家だ。

ここでまた筆をとったことが、紛れもない事実としてそれを証明してくれている。


私の物語は私が紡ぐ。

自分の物語すら自由に紡げなくて、何が“作家”だ。


見ていたまえ、完璧にやってやるさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

作家になりたかった作家の話 umi @umi3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ