第13話 闇の中へ
~ side:バルナバ ~
―― 。
―― 。
バルナバの母は言った。
「欲しい物はない?」
バルナバの父は言った。
「欲しい物を言え」
一流の職人が作った綺麗な騎士の人形が、バルナバの手の中に収められた。
見目の良い貴族の家に生まれた少女達が、バルナバの前に並べられた。
シルヴェリ家に望めば全てが手に入る。
―― 。
それがバルナバの世界だった。
―― 。
……。
……。
「や、やめろ――――――――!!」
バルナバが玩具にして使い捨てる積もりだった少女が呼び出した炎の鳥は、バルナバの叫びを一顧だにせず、地下で蠢く膨大な炎に『ぶち抜け』と命令した。
地面が暴れるように揺れる。
亀裂から眩い光が溢れる。
カミラの「あは♪」と弾む声が聞こえて、そして。
「う!?」
雷轟の響きと共に莫大な炎が噴き上がった。
「おおおおおおおお!?」
闇夜が消え、広大な草原が消え、バルナバの見る全てが炎の赤で塗り潰される。
(あり得ない)
ボニートのテン・ストラテジーの砲撃も、ノミエが召喚した精霊の結界も、炎に呑まれ消えていく。
バルナバの視界の中で赤い炎が笑う。
笑いはやがて幾つもの死者の顔となり、その視線をバルナバへと向けてきた。
「ひ、ヒイイイイイイイイ!!」
炎に浮かぶ老若男女の全てが、バルナバが踏み躙ってきた者達だった。
「消えろ! 消えろおお!!」
彼らはその目に憎しみの炎を燃やし、バルナバへと迫ってくる。
バルナバの右手が癇癪を起した子供のように魔剣【アイス・ファング】を振るうが止まらない。
死者達の顔が炎の手となってバルナバの顔を掴み、焼いた。
「ぎゃあああああああ!!」
炎が消える。
全てが幻だったかのように、バルナバ達の周りに静寂が訪れる。
だが。
「貴様ぁ」
煌々と輝く炎の鳥が、落ちていくバルナバ達を見下ろしている。
夜の闇を寄せ付けず、まるで絶対の光たる太陽のように。
(堕としてやる)
バルナバの体は光から遠ざかり、闇の中へと落ちていく。
(この俺の手で、その忌まわしい炎を汚泥の底に堕としてやる!!)
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