第9話 イフリートVS冒険者達 二

「ちょっと待ちなさいバルナバ!!」


 女の制止にも止まらず、憤怒の形相のイケメンが俺へと突っ込んでくる。

 その体には青い洸の守りを纏い、右手には尋常じゃない魔力を放つ剣を握っている。


「ああもうっ、これだから貴族のお坊ちゃんは。ボニート、速射に切り替えてバルナバの援護。ノミエはとにかくバルナバの〈守り〉に集中しなさい」

「ごすっ」

「う、うん!」


 大男の右腕から連続して砲撃が放たれる。

 溜めを無くしたせいだろう、今度は翼の表面を削る程度の破壊力しかない。

 炎を圧縮した翼以外で受ければ危うい威力ではあるが、それでも十分凌ぎ切れる攻撃だ。


『だから先ずるべきなのは』


 俺の炎を腹の中で圧縮する。

 〈でかいの〉から食った〈緑〉も腹に馴染み、俺の炎は段違いに威力を増した。


っ!』


 手加減無し、全力の炎をイケメンにぶつける。

 〈でかいの〉でも火達磨にできる確信のある、会心の一発だ!


「この程度の炎で!」


 イケメンの剣の先が俺の炎に突き出された。

 その剣身から膨大な凍気が噴き上がり、俺の炎と拮抗する。


「下民風情の魔法如きが!」

『そっちこそ刃の付いた鉄の棒切れ如きでっ、俺の炎と張り合うんじゃねえよ!』


「おのれっ、我がシルヴェリ家の傑作たる魔剣っ、【アイス・ファング】を愚弄するかっ」

『うるせえっ、大人しく丸焦げになりやがれ!』


 も文字通り煙のように消えていくが、俺の方が少しだけ優勢だ。


 また、俺とイケメンの距離が近くなり味方同士の誤射フレンドリーファイアの確率が高くなった事で、大男の砲撃が止んだ。

 それは即ち、俺は防御に使っていた力を攻撃に回せるようになったという事であり。


 加えて。


「こ、この」


 魔法である俺と違い、生身であるイケメンの方が消耗は大きい。

 強大な力を制御する精神力も、死地の中でしのぎを削る体力も。


―― 立つ瀬の消えていく奈落の淵。


 今の状況がどれ程の負荷となって襲ってきているか、俺も数時間前までは人間だったから察する事ができる。


 だからそう、お前の目に恐怖が過った今この瞬間が、逃してはならない勝機である事も!!


『呑み込め!!』


 俺の体を消し尽くす勢いで火力をぶち込んだ。

 小さなひびから亀裂が走り氷塊が砕けるように、凍気の勢いが崩れ、散っていく。


「あ、ああ、うあああああああ!!」


 った!!

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