紅一点な椿

@Syougakkouhadetakeredo

第1話

猛暑日が続く7月。小学生の時はもっと涼しい気がしたけど、最近では暑く感じる。でも、こんな日は彼女を思い出す。彼女と出会ったのはまだ暑くなかった小学生の時の7月だった。

彼女を見つけたのは下校途中だった。自分の家の近くに住む同級生がいないから、集団下校とは名ばかりで、帰る時間の8割は1人だった。周りは田んぼが広がっていて用水路が延々と続き、周りは山に囲まれている、そんな広大な光景も下校の時に何度も見れば何も感じないし、その頃は何も感じなかっただろう。ただ、その時は違った、そう彼女を見つけた時は。周りが田んぼと山で茶色と緑色が多い中、彼女だけはレースの付いた赤のワンピースを着ていた。紅一点というのはこういう事を指すのではないかと思ってしまった。

「おかえり」

彼女は僕を見つけて微笑みながら言った。

さあ困った。見知らぬ人におかえり、と言われた時なんと返せばいいか。“ただいま“というのは距離が近いし、”こんにちは“というのはおかえりに対する返答に向き合ってない気がする。僕がそう困っている内に彼女は言った。

「ねえ君。ここから紅点山はどうやって行ったらいいかな?」

紅点山はこの地域に住む人が使う愛称みたいなもので、周りを囲む山は冬になると椿がポツポツ咲き始める。一箇所の場所に集まっていないから赤い点が沢山ある様に見えてとても綺麗だ。夏の間は虫取りぐらいしか何もない気がするけど、なぜ行きたいんだろう?彼女にそう聞くと

「それは一緒に行ってからのお楽しみだよ」と答えた。

いつの間にか僕も行くことになっていた。

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