第6話  ブラックジャック・’最終回’の試案


  

   如月きさらぎけいは、個室のベッドで目覚めた。

  船医の激務で倒れ、人事不省となり、緊急入院…念のために精密検査をした。


  その結果、過去の子宮筋腫の、とり除いた病巣のあとに親指大のガンが見つかり…その再検査の上、できうれば切除して、…要するにできてしまったガンの見極め、処置についての適確な診断が必要となり…名医が招聘された。


 その名医はなぜか本名を伏せてほしいというのだが、腕の確かさでは定評があるらしくて、「心配しなくていい」らしかった。

 周囲の誰もがそういうので、恵は覚悟を決めて、受諾のサインをした。

 そうして今日、まったく事前のコミュニケーションやinformed consent もないまま、緊急に手術が行われたのだ。


 「お目覚めですか?」

 「ええ。」

 「ご気分は?」

「痛くもかゆくもないです…成功したの? オペは」


 枕もとのナースに、医者ドクターでもあるクランケが、いろいろとテクニカルタームをまじえながら、様子を尋ねて、…手術が成功して、経過も見通しも順調であるのがわかった。


 が、ナースの口調はどこか歯切れが悪くて、どうも恵には秘密な、”なにか”が、手術の間に生じているらしいのだ…明敏な恵にはそれがわかった。


 「いったい執刀医はダレなんですか? あなたたち、なにかを隠しているのね?」


 しびれを切らして、恵は単刀直入に尋ねた。

 「要するにガンは雲散霧消した。 いったいなにが問題なんですか? 別に不治の病とかが見つかったんですか? はっきり教えてください!」


 「いえ、…その逆なんです。 執刀されたのは、あなたもご存じの”奇跡の腕”を持っていると言われている超有名なドクターで…そのかたが、自分が全責任を持つから、とおっしゃって、極秘裏にあなたには許可を得ずに特別な手術を施したんです」


 恵は驚愕した。!!

 その”奇跡の外科医”とは…もう言うまでもない。

 ブラックジャック!

 恵に横恋慕していた、あのぐれた無免許医。だが、超エクセレントなオペの天才。

 今では巨万の富を築いてNYにいるという噂の間黒男医師のことではないか!


<続く>







   

  

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手塚治虫と宮沢賢治 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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