第一話 ライブラリとしての日々

週明け、今日は月曜日だ。

僕はいつも通り出勤していた。

「都内でSAの通報があった。直ちに向かってくれ」

「「了解」」

今日の襲撃は都内、N区だ。

目撃者の証言によるとそいつは自らの臓器を操り、人を襲っているらしい。

「また人体ですかね」

「だと思うよ。毎週毎週何が楽しいんだか」

「強力なシリーズ使いを一般人の中から探すなんて相当難しいですよね」

「そうだね」

会話をしていると先輩が僕のことをジロジロ見てくる。

「なんですか」

「いや、だいぶ板についてきたなって思って」

「もう半年ですからね」

「仕事ぶりから見ても元引きこもりとは思えないよ」

「ディスってます?」

「ソンナコトナイヨ」

棒読みだ。


シリーズ。

それは一般人に扱うことのできない異能の力。

その異能の力を使うことの出来る者たちをシリーズ使いという。

その事象に対しての思いが強ければ強いほど能力もまた強力になる。

例えば、花がとても好きな一般人のシリーズ使いと花を研究してる研究者のシリーズ使いがいるとしよう。

一般人のシリーズは花の成長促進や弱っているのを元気にしたり、その程度だろう。

だが研究者や長年愛でてきた人となると違ってくる。

根や伸びたつるなどを操作し相手を拘束したり、花の毒を強化し相手を殺めたり。

様々なことが可能になる。

シリーズというのは使用者によって天と地ほどの差が生まれる。

一見、何の役に立たなさそうなシリーズでも思いの強さによっては強力な力に化けることもある。

だから管理するものが必要なのだ。


「到着!」

僕達は道路のど真ん中にいるその人を確認すると車を停車させ、様子を伺う。

「今回も人体で間違いなさそうですね」

「ほんと懲りないよね〜」

僕達は車から降り、人体に向かって歩き出す。

「何度戦ったってソラ君には勝てないのにね」

「どっちかって言ったら先輩でしょ」

「え〜最後は毎回ソラ君じゃん」

「やろうと思えば先輩一人で決めきれるでしょ」

「え〜無理だよ〜」

先輩は頭を掻きながら謙遜する。

ちなみにこの人は僕の数倍強い。

「来たか!」

人体は僕達の事を視認した途端、喜びながらそう言う。

「毎回毎回、負けるの飽きないの?」

先輩が故意か無意識か人体を煽る。

「ハッ。言ってろ」

「へえ自信有りげだね。なにかある事を期待しても良いんだね?」

「今日こそは必ずお前らを殺す!」

「やってみなよ。どうせ無理だろうけど」

毎回この人達は戦う前には口論に似た痴話喧嘩を始める。

「先輩、痴話喧嘩はそのへんで」

「「は!?」」

二人が同時に反応する。

やっぱ仲いいなこの二人。

「さ、始めますよ。先輩」

「痴話喧嘩じゃないんですけど!」

しまった。

先輩が面倒臭くなってしまった。

なので今日は僕が担当することにする。

大きな声を出すのは得意ではないのだが…

「ライブラリ、部隊名宇宙。日真環 宙、明日楽 星来。業務開始!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る