BIG BANG

しるふ_

第零話 恒星という素晴らしい天体

人はなぜ研究をするのか。この問いの答えは人によって違う。

生物、物理、化学、地学。研究には様々な分野があり、その中から対象を選び、研究し、論文を書く。この一連の流れの原動力は何かと問われた時、僕はいつだって好きだからと答える。



太陽。それは宇宙空間で美しく光り輝き、地球を明るく照らす素晴らしい天体だ。

僕の小さいときはなぜ直接、自分の眼で見てはいけないのかすらわからなかった。それがとてももどかしく、悔しかった。

時は過ぎ、天文台が家の近くにできた。そこから僕は毎日の様に天文台に通い、観察し、記録をした。それを見かねてある日天文台の職員が話しかけてきた。

『どうして君は恒星ばかり観ているんだい?』

そう聞かれた時、僕は相手の目を見てハッキリと言った。

『恒星を愛しているから』

いつしか、学校も行かなくなり日中はずっと天文台職員の方達と話をするようになった。


そして現在、僕は今日に至るまで新しい恒星を三つ見つけた。ただそれら全てを天文台職員さん達の功績にしたので僕の数年間の研究結果はほとんどない。

やったことといえば、その三つの恒星に名前をつけた程度だ。その程度の筈なのに…

「誰ですか」

「柊神奈です。研究結果を見せてもらいに来ました」

ある日知らない女性がやって来た


その日は研究結果だけ見て帰っていった。が、一週間後。またその人がやって来た。

「君には論文を書いてもらいます」

「嫌です」

「なぜ?」

「目立ちたくないからです」

その人…神奈さんは少し考える素振りをする。

「ではこうしましょう」

神奈さんはそう言うと部屋に落ちている紙を拾い上げ、僕に突き出してくる。

「目立ちたくないということなので私名義で論文は発表します。その代わり、二つ条件を出します」

二つの条件。学校に行けとか家から出ろって言われたらどうしよう。

「一つ目は論文の下書きを書くこと、それでもう一つは―――


―――私の助手になることです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る