わが名はアルジャーノン

ユキ丸

はつ恋

窓際に腰かける美しきシルエットがある。

風はカサブランカの花びらを揺らしながら、

放課後を告げる白いカーテンを窓から解放した。


「きみ、もう帰る時間だよ」

ソーダ色の髪がはらりとはじけるように落ちて、

シルエットがふり向く。


息を呑むような、とはこの瞬間のことだったかも知れない。

透きとおるような樹脂の肌にほのかな夕日が反射した。


「恋に落ちる瞬間のメソッドを解析するならば……」

少年ソプラノのような細い声が聞えてきたが、

ぼくは混乱していて、脳髄が痙攣を起こしていた。


「わが名はアルジャーノン」

少年の声がはっきりと聞こえた。

「つまり君は」

「そう、ぼくはモルモットに過ぎない、初恋の」


「もう時間だ」

アルジャーノンは一瞬、ぼくの瞳の奥に入り込んだかと思うと、

つぎの瞬間、花びらが散るように床に崩れ落ちて、


そして、消えてしまった……。

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わが名はアルジャーノン ユキ丸 @minty_minty

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