わが名はアルジャーノン
ユキ丸
はつ恋
窓際に腰かける美しきシルエットがある。
風はカサブランカの花びらを揺らしながら、
放課後を告げる白いカーテンを窓から解放した。
「きみ、もう帰る時間だよ」
ソーダ色の髪がはらりとはじけるように落ちて、
シルエットがふり向く。
息を呑むような、とはこの瞬間のことだったかも知れない。
透きとおるような樹脂の肌にほのかな夕日が反射した。
「恋に落ちる瞬間のメソッドを解析するならば……」
少年ソプラノのような細い声が聞えてきたが、
ぼくは混乱していて、脳髄が痙攣を起こしていた。
「わが名はアルジャーノン」
少年の声がはっきりと聞こえた。
「つまり君は」
「そう、ぼくはモルモットに過ぎない、初恋の」
「もう時間だ」
アルジャーノンは一瞬、ぼくの瞳の奥に入り込んだかと思うと、
つぎの瞬間、花びらが散るように床に崩れ落ちて、
そして、消えてしまった……。
わが名はアルジャーノン ユキ丸 @minty_minty
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます