ぼくらのリビングキャット

及川まゆら

最初「お前らに言いたいことがある」

 初めまして、及川まゆらです。

 カクヨムに登録するのは、2回目。数年前までカクヨムユーザーでした。この明朝体も懐かしくエピソードを書き進めていますが、もし過去に私の作品をカクヨムで読んだことがある古株ユーザーがいたら……印象は宜しくないこと請け合い。


 だって私は、前科持ち。


 カクヨムで真っ向アダルト一本勝負! なぜ、そんなことをWEB小説投稿サイトでやろうとしたのか。多分ねぇ思春期みたいな(小説投稿サイトをなめてた)時期が私にはあって、最初はバレなかったんですよ。

 でも、ある日メールアドレスに一通の『警告』が届いた。

 小説の内容を修正する旨の定型文でした。ただ、どこを直すのか? 明確でないのをいいことに、そのまま無修正の危険な愛体験を書き続けました。

 情熱的でしょう。そんなことをすると、どうなるか。


 ここはWEB小説投稿サイト

 ランキング上位に"それ"が存在すると、同じことをする作家が次々に現れます。


 まるで日本を代表するアダルトポータルサイトのような治安に。すぐに特定されました。カクヨム運営は利用規約であるルールを守るように私に促すのは当然の流れ。突然消えた作家もいました。二度目の警告に抗議した後から、異変が……。

 ジャンルを選択して投稿しても、設定したジャンルでは投稿ができなくなり、運営が定める 終には投稿することもできなくなり自主退会。

 当時はその程度で済みましたが、今のカクヨム運営は『シゴデキ』の精鋭が揃っています。さすが天下のKADOKAWAだと手に馴染みを持つ私が、戻った理由は。


 心を入れ替えて、ど直球アダルト引退?

 いいえ。ここからはその経緯について話します。


 まぁ、5年間の歳月をかけてWEB小説投稿サイトを利用、またSNS・X(旧Twitter)で創作界隈を見て思うのは、ある人物の<残念な人たちの未来について>の予言が、現実のものになってしまう終末。これに他ならない。


 世界中に猛威を振るったパンデミックから、5年。

 それまでの生活が一変する社会現象に迫りくる現実。あの出来事は、皆さんの記憶にも新しく思い出されることも多いでしょう。

 人と距離を取るソーシャルディスタンス。

 #おうち時間がトレンドになり、ステイホームが日常化。社会の中で"個"が尊重される風潮に身を委ね、変わりゆく生活に求められる多様性と配慮を謳い「今までと違う楽しみ方をみつけた」それは創作界隈にも大きな影響を与えました。

 分野によるクラスターの発生と、誹謗中傷。

 インターネット上で起きていることが原因で命を落とす、人々の悪意は迷惑行為の度を越えて司法へ。言ったもの勝ちという錯覚の蔓延には終末の気配を感じます。

 

 それでも、ひたむきに小説を書く人がいます。


 彼らを見て、

 ──気が付いたことがある。


 私が敬愛する札幌のカフェ経営者がくれたパーフェクトバイトな言葉を用いると「カフェなんかこの世の中になくても究極的には困らない。だけれども、この世の中からカフェが無くなってしまったら、僕たちはどの場所で夢想し、愛を語り、希望を見出したらいいんだ。」この、という言葉に……自分にとっては大切だけど、他人にとってはどうでもいいこと。

 価値観と想像の全ては自分だけの資産価値。そして、他人が穢していいものではないという概念が生まれた。


 インターネットという情報の大海に広がる、多様性と承認欲求。

 匿名希望が日常の“失われた30年”は終わり、本人出演の動画が最盛期を迎えて飽和状態になっているのに「YouTubeで稼ごう」と薄鈍色した希望の切符を握るのは過去に志した夢に破れた愚者。誰でも簡単に登録できて、なんだか稼げそうな目先のキラキラした内容にシフトチェンジしている。高確率で。

 裏切りはいつも側にあるのに、あまい匂いが染み込んだ想いを捨てても、すぐに芽生える。黎明に期待して成功を夢見る新人でいたがる、その方が楽だから。どの業界でも新人はある程度の需要があるので。


 でも、現実はコツコツと続けて自分だけが納得する意味を心に宿している。

 誰にも穢されることもない芸術の中で、

 夢想し、

 愛を語り、

 希望を見出す。その術に、私は何度でも感動します。

 

 そんな強い奴に、会いたい。


 ──とはいえ、インターネットの特性上がここにもある。

 もっと過激に、もっと素敵な嘘をついて「何か」から逃れるために創作をする作家もいるだろう。その虚構にあって無いものを万が一見つけてしまっても、黙っていられる嘘を、私も差し出すことができる。それだけは伝えておきます。


 あなたの創作というリビングに忍び込む、猫でありたい。

 どうか、可愛がってください。

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