第3話一時停止は英断 完結(仮)



文化祭当日。

家庭科室前は長蛇の列——合法的。

袋の格子窓から、きつね色がドヤ顔している。


「営業開始!」

初手、手のひら判定で景気づけ。

ぱん。

拍手。いい音はだいたい正義。


そこへ衛生委員が小走りで来た。

「手袋の補充遅れ。トングも一本足りない。一時停止を」

客のざわつき……。アイリの目が揺れた。

「止めたら列が崩れる」

「行列を止める勇気がある方が、店は長く続く」俺。

一瞬。

アイリは顎を引いた。

「停止命令、出す。10分」


列から不満の泡が立ちのぼる。

アイリが前に出て、マイク代わりに紙コップ。

「安全第一で一時停止。待っている間、音の試食をどうぞ」

天板の底を、ぱん。ぱん。

「音がいい!」「なんか勝った気持ち!」

謎の士気上昇。合法的に待ち時間を溶かす。


手袋補充、トング確保、手洗い再確認。

俺はノートの見出しを太く書く。

《英断:停止10分/再開手順◎》

横に褒め一行があふれて、はみ出す。

《褒:アイリの停止宣言、声がよく通る》

《褒:列への説明、簡潔》

《褒:顔、かっこいい(小声)》

「最後の、小声って書かないで」

「法外でした。削除」

「いいよ、保存」


再開。

ぱん。

列が音で進む。

匂いが廊下にのび、拍手が波になる

袋窓の中で、きつね色が満場一致


終盤

売り切れが見えた頃、アイリが息を整える。

「閉廷にします」

「判決は?」

アイリは手を出した。

「長めの“ぱん”で」

ぱん——

一拍、二拍。

掌の温度が、ほんの少しだけ上告して長居した。


「レン。偽装じゃない何かは未定だけど」

「未定は可能性だ」

「判決:延長審理」

「異議なし」


ノートの最後に、二人で書く。

《前文:砂糖は世界を丸くする》

《第1条:音のいい日は、だいたい正しい》

《第2条:褒め一行は毎日

《付則:長めのぱんは記念日に》


教室の灯りが落ち、匂いだけがしばらく残った。

勝因? 音と匂い。あと、砂糖刑


(第3話・完)

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手のひら判定で恋は無罪——家庭科×生徒会 @Eranthis_pinnatifida

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