アパートの現人星たち

ピロ

第0話 現人星とは

宇宙誕生から138億年。宇宙に佇む事に退屈を極めた惑星、恒星達が分身し「現人星(あらひとぼし)」として、人類が住む星、地球に降り立った。彼らの殆どは肉体を女性とし、住む場所を探し目をつけたのは日本国、東京都の都心部から少し外れた郊外。そこでなんとか全員が住めるような中規模のアパートの契約にこぎつけ、「地球人」になんとか同化しようと暮らしているが、その見た目からあまり地球人との同化には至ってない様子…


彼女達について、近所の奥さん達に聞いてみた。

「あぁ、あの四六時中コスプレしてる人達?」

「騒がしいわよねぇ」

「多分お母さんでしょうねぇ、お母さんもコスプレしてるのよ?すごい高身長でオレンジ色のウィッグ付けて…」


…できてない。明らかに同化できていない。むしろ目立っている。本人達はこれでも同化できているつもりらしい


ここで、彼女たち──現人星について説明しておこう。

彼女らは惑星や恒星の「分身」である。

本来ならば、分身した時点でも山より大きなサイズになるはずなのだが、

どうにかこうにか人間サイズにまで縮めている。


最初に地球へ降り立ったのは太陽。

その後、面白がった他の惑星や衛星、さらには恒星までもが次々と分身し、

今ではアパート一棟をまるごと借り切って暮らしている。


もっとも、彼女たち本人は「地球人に同化しているつもり」らしいが、

近所からはただのコスプレ集団と思われているのが現状である。

そんな彼女達、とりあえず太陽系組を紹介しよう。


太陽:褐色肌とオレンジのロングヘアー赤い瞳、200cmの高身長。元の太陽が巨大である故に、あちこちが大きい。

性格は男勝りで姉御肌。太陽系組の総括、お母さんポジションであり、ヘマをした他の現人星を叱ったり、尻拭いに手を焼いている。

今後数億年かけて太っていく事を薄々自覚しており、なんとかそれを止めることはできないか考えている。ちなみに分身当初の服装はエジプト風だったが、露出が多すぎて日本では馴染めないと見込んで今は普通の洋服を着ている。趣味は食べる事。

地球での悩み事は、ドア上に頭をぶつけること、食への誘惑が強すぎること。


水星:アルビノのような白い肌に銀色のロングヘアー、水色の瞳で身長110cmの低身長。まるで幼女のような見た目である。実際まだ5歳から6歳程度の知能しか持っておらず、「ママ」である太陽に基本的にずっとくっついている。すばしっこく、少しでも目を離せばどこかに行ってしまう為、太陽は非常に手を焼いている。

性格は非常に陽気で、まさに年相応の元気いっぱいな女の子と言った感じである。分身当初から服装は白いワンピース。趣味は積み木遊び。

地球での悩み事は、日課の散歩の通り道にある幼稚園に入れない事。


金星:金髪ショートヘア、金色の瞳を持つツリ目の160cmのギャル女子といった見た目である。性格は非常に陽気だが、その一方で非常に怠けており、行動が遅い節がある。地球とは仲が良く、頻繁に地球の部屋に遊びに行っては徹夜でゲームをするなどして、地球を少し困らせる節があったり、金遣いが非常に荒く太陽の頭を抱えさせている。近所の女子高に通う事を夢見ている。またそのありがちな金髪などから唯一「コスプレではなくただのギャル」と近所から認識されている。分身当初から服装はよくあるギャルの服装である。趣味は化粧とゲーム。

地球での悩み事は、誘惑が多すぎてすぐにお金が尽きる事。


地球:青と緑が混じったポニーテールで黄色い瞳、身長160cm。性格は常識人だが、時に熱くなったり極端に冷めたりするので、「躁鬱」と周囲に皮肉られる事がある。水分補給を忘れて時に脱水症状になったり、流行り病にすぐ侵される。

現人星になったのはかなり遅めで、太陽系では最後に分身した。地球で好き勝手暴れる太陽系組に一石を投じる目的だったが、上手く丸め込まれて見事にその好き勝手暴れる一員になっている。分身当初の服装は地球柄のワンピースだが、今は普通の洋服を着ている。趣味は金星とゲームをする事。

地球での悩み事は、自覚していなかった地球上の争いをただ眺める事しかできない事である。


火星:少し赤黒いショートヘアで赤い瞳、身長155cm。性格はまさに熱血で、周囲を巻き込んでトラブルを起こす事が多く、太陽を悩ませるが、太陽と1番気が合うのは火星なので、基本的に太陽と一緒に居ることが多い。太陽が「地球がダメになったらお前に行くからな」と言っている為、将来的に地球のように好き勝手されるのを恐れている。また焚き火が好きで、よくアパートの前で焚き火をして大家に怒られている。服装は分身当初から赤色を基調とした洋服。趣味は焚き火と太陽と遊ぶこと。

地球での悩み事は、好きな場所で焚き火が出来ないことである。


木星:木星のような色んな色が混じったロングヘアーで、目も木星のような色んな色の瞳をしている。渦巻の髪飾りをつけている。身長190cmで、分身元が巨大ゆえにあちこちが大きい。性格は非常に寛容で寛大。火星やらがヘマをして太陽が頭を下げている様子をニコニコしながら眺めたり、太陽がほかの現人星を叱責している所を「それくらいでいいじゃない」と静止したりする。彼女が抱えている衛生たちのしでかす事も否定せず全て認めてしまう為、太陽が代わりに叱る羽目になっており、太陽を悩ませている。余程の事をしない限り怒らない為、周囲からの印象は常に笑顔と言った所である。服装は分身当初から一見、色味が故にカビだらけのようなワンピースだが、よく見るとしっかりとした模様になっている。趣味は他の現人星が引き起こすトラブルを眺める事と、寝ること。

地球での悩み事は特にない。


土星:おでこを囲うように輪っかが浮かぶ、黄土色のショートヘアに茶色の瞳で、身長180cm。やはり分身元が巨大故にあちこちが大きい。性格は木星よりかは厳しめだが、やはりちょっと寛大な節がある。衛星のタイタンとは仲良しで、よく一緒に行動している。太陽系達の中では1番の平穏を保っていて、衛星たちと仲睦まじく生活している。分身当初の服装は黄土色のドレスだったが、現在は普通の洋服を着ており、髪色などこそ地球人とは同化できていないが、1番地球人らしい服装をしている。趣味はタイタンら衛星と雑談をすること。

地球での悩み事は特にない。


天王星:水色のロングヘアーに白色の瞳で、身長170cm。性格はとにかく穏やかで無口で、太陽などからは「もっと自己主張をしろ」と言われるほど。しかし口を開けば想像の斜め上の事を言ってくるので、あまり話さないで欲しいと周囲から思われている。寝ることが好きで、しょっちゅう寝ている。影も薄く、忘れられることもしばしば。だが海王星とは仲良しで、外縁組としてよく一緒に遊んだりしている。それどころか、海王星と遊ぶ時しか起きていないんじゃないかとまで言われている。服装は白いワンピースを分身当初から着ている。趣味は寝ること、海王星と遊ぶこと。

地球での悩み事は、影が薄いため街中を歩いていても他の現人星と違ってコスプレなどと思われないこと。


海王星:一箇所色が濃い場所がある青色のロングヘアーに青色の瞳で、身長175cm。性格はクールビューティだが陽気な方で、積極的に天王星を遊びに誘うなどしている。太陽系で1番外側なだけあって、太陽とは太陽系外の状況を報告するなどで接点が多い。そこそこ社交的で普通に太陽系の内縁組にも干渉する。水遊びが好きで、天王星を連れて河川敷に行って川遊びを好きなだけ遊んで帰ってくる事が日課。分身当初から服装は水柄のドレスを着ている。趣味は水遊びと、天王星と遊ぶこと。

地球での悩み事は、彼女にとって地球は少しばかり暑いこと。


他にも準惑星である冥王星や衛星達、恒星達など様々な現人星達がいるが、今回の0話はこのメンバーだけ紹介しておいた。次回1話から、現人星達の日常が始まる。それまで暫し、お待ちいただきたい。

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