第6話 窓の向こう

朝の教室。窓から差し込む光が、黒板のチョークの粉を淡く照らしていた。

ぼくは窓際の席に座り、外の景色をぼんやり眺める。

桜の枝が少しずつ緑に変わり、春の終わりを告げている。


友達の悠人が隣に座った。

「最近さ、授業が終わった後も、何か考えちゃうんだよね」

「うん、ぼくも同じだ。勉強だけじゃ満たされない気がする」

互いに目を合わせて笑った。

問いは孤独じゃないと、少しだけ安心できる瞬間だった。


放課後、図書室に立ち寄ると、先輩が残したノートを見つけた。

「人生は、どれだけ迷っても歩き続けることに意味がある」

その言葉が、ぼくの胸に静かに響いた。

迷いは消えなくても、問いを抱えたまま進むことが道を作るのだと気づく。


家に帰ると、母が夕飯を作っていた。

「今日も学校はどうだった?」

「うん、なんか少しわかってきた気がする」

言葉にすることで、迷いも少し整理される。

母は笑顔でうなずき、ぼくの頭をそっと撫でた。


夜、机に向かい日記を開く。

ペンを握り、今日の出来事や感じたことを書き込む。

「人生はまだ見えない道。でも、この問いがぼくを前に進ませる」

文字にすることで、問いは重さを持つだけでなく、光をも帯びる気がした。


窓の外、夜風が桜の枝を揺らす。

その揺れは、まるで問いの声を運んでくれるようだ。

ぼくはそっと目を閉じた。

まだ答えは見えない。でも、問いを抱え続けることこそが、ぼくの人生の第一歩なのだ――そう思った。

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