リサ先輩との妄想勝負も、いつも私の完敗です!~妄想ヒロインは、今日も先輩に恋してる~

Çava

リサ先輩!私と下着屋さん…です……

「リサ先輩!私と下着屋…さんです……」


そう、私は、リサ先輩と一緒に下着屋さんへ行くことになる……。


――――――


思い返すと、ほんとなんでもないフツーの放課後の時間だったんだ。

部室。夕方。二人きり。

机に本を並べて、ページをめくる音だけが静かに響いてて。

外は薄暗くなり始めてたけど、窓際に差すオレンジの光が部屋をやさしく染めて、なんか……まるで世界が私たちだけのために用意されてるみたいな、そんな空気だった。

私はそれだけで胸がじんわりして、心の中で「こういう時間がずっと続けばいいのに」なんて、甘いこと考えてた。



――で、そんな幸せな空気が。


「ルリちゃん、最近ちょっと地味じゃない?」


……リサ先輩のその一言で、粉々こなごなに。

地味? 何が??


「え、えっ!? じ、地味って……ふ、普通ですよ!? フツー!」

声が裏返ってて、自分でもびっくり。

ページをめくる手が止まって、本がバサッと机に落ちる。

……え、ちょっと待って。今の、なんの話題? 何その方向転換?

だって今、ただ本読んでただけだよ? どうして“地味”って話になるの!?


「うん。なんかこう……ふつうっていうか。安定してるのもいいけど」

にっこり笑いながら、先輩はあっさり言ってくる。

あ、あれだ。これは爆弾だ。笑顔に偽装された爆弾。


「ふ、ふつうが一番なんです! ふつうで充分です!」


「ふつうじゃもったいないの。ルリちゃん、せっかく可愛いんだから」

にっこり。やめて!……ほんとやめて。

だってその言い方、全然逃げ道残してないじゃん。


「も、もったいなくないです! フツーで、十分ですから!」

私は必死に反論。けど、声は上ずるし、説得力ゼロ。

だって、普通が一番安全だし、ドキドキしないで済むし、心臓にやさしい。


……なのに。


「もっと攻めていいのよ? 下着とかさ」


……はいストーーップ!!!

待って待って待って。

下着!? 今、下着って言いました!?


「し、下着!? え、せ、先輩っ、いきなり何言ってるんですか!?!」

勢いで椅子をガタッと引いて立ち上がる。もう完全にパニック。

頭の中で赤ランプが点滅してる。「ピーッピーッ! 禁則事項です!」って。


「だって、ほら。せっかく彼女できたんだもん、そういうのも楽しみたいじゃない」

――彼女。

その言葉で心臓がまた一段跳ねる。

そうだ、私たち付き合ってるんだ。ちゃんと「好き」って言い合った。

でもでも! 付き合い始めてまだそんなに経ってないし!

手をつなぐだけで私、顔真っ赤になってるのに、下着!? 話のレベルがいきなりすぎる!


「ちょ、ちょっと待ってください! まだそういうのは早いっていうか……!」

あわあわしながら言い返す。

なんとか食い止めないと! 下着屋行きなんて、まだ心の準備どころかイメトレすらしてないんだから!


「早い、かな? でも、楽しいと思うけど」

軽いトーンで返してくる。余裕たっぷり。

やばい、この人ぜったい私の動揺を楽しんでる。


「た、楽しいとかそういう問題じゃなくて! えっと……そう! 友達同士でもフツー、そんなとこ行かないですよ!」


「そう? 別に普通でしょ?」

普通じゃないから!!

なんでそんな落ち着いた顔してるんですかリサ先輩!!


「そ、そんなの……わ、私は別に、下着、で困ってませんし……!」

必死に言い返す。が、声がどんどん小さくなる。


だって先輩、楽しそうに笑ってるんだもん。余裕の笑みってやつ。

「そう?困ってなくても、楽しいと思うけど?

 新しいの選んだら、気分も変わるし。

 アタシが選んであげるから。ね、今から一緒に、行こ?」



そんなリサ先輩の笑みに負けないよう、私は必死に言葉を探す。

そうだ、さっき言った、「友達」路線で押し通そう!

「だから! 先輩と私も、えっと……友達感覚、っていうか……」

……うわ、我ながら苦しい。けど、もうそれしかなかった。


「友達感覚ねぇ……」

リサ先輩が目を細めて、じっと私を見てくる。

あっ、やばい。完全にバレてる。言い訳にしか聞こえてない。


「だってまだ! その……! わたし、手つなぐだけでドキドキしてるんですよ!? だから下着とか、そんなの、飛びすぎ、っていうか……!」

必死に声を張るけど、どんどん涙目っぽくなる。

くそぅ、なんでこんなに押されっぱなしなの私!

しかも、手をつなぐだけでドキドキ!とか、しなくてもいい告白をしてしまった……。


「ふふ。そういうとこ、ほんと可愛い」

――もう! そうやって笑うの禁止!

ずるい。絶対わざとやってるでしょ。


「と、とにかくっ、友達だって下着なんか一緒に見に行かないんです! だから無理です!」

私は机をばんって叩いて宣言した。

どうだ、この必死の抵抗! 今度こそは押し返せ――



「でも私たち、もう友達じゃないじゃん?」



……え。

な、なにそれ。

たった一言なのに、私の心臓がドクンと跳ねて、変な音を立てた。


先輩はいつもの、ちょっとずるいくらいの笑顔。

ふわっと口角を上げて、私を見下ろす視線。

それだけで、なんだか逃げ場をじわじわ塞がれていく。


「……え、えっと……」

必死に言葉を探す私を、先輩は逃がしてくれない。


「それとも、あれはウソ?」

「え?」

「アタシにしてくれた、愛の告白。あれ、ウソ?」


ドクン。

心臓が爆音。

ちょっと待って、それ今ここで持ち出す!?


「い、いや、ウソじゃなくて……!」

慌てて否定すると、先輩はさらに追撃してきた。


「じゃあ、アタシの心を……もてあそんだの?」

「なっ……!?」

「好きって言っておきながら、いざとなると“友達”扱い。そりゃあ、もてあそばれてるって思うしかないでしょ? ひどいわ……」


わざとらしいほどしょんぼり顔。

肩を落として、ため息までついてみせる。

絶対、本気じゃないのに。

でもその「演技」に、私はもうオロオロするしかない。


「ち、ちがっ、違います! もてあそんでなんか……!」

「ほんとぉ?」

疑いの目線でのぞき込んでくる先輩。

にやにや笑ってるのに、その視線だけは鋭くて、私の胸の奥をつんつん突き刺してくる。


「ルリちゃんはさぁ……」

「は、はいっ……」

「アタシのこと、好き?」


ぐはっ。

きた、直球。

これ、何度聞かれても、ぜーったい、慣れないやつ。


「そ、それは……」

「“それは”じゃなくて。好きなら好きって、ちゃんと言って?」


「う、ぅぅ……」

「言えないってことは……やっぱりウソだったのかなぁ?」


「う、うそじゃ、ない……です……」

「じゃあ?」


完全に追い詰められた小動物状態。

私の視線は泳ぐ。

部室の壁、机、窓の外……どこ見ても助け舟はなくて。

あるのは、リサ先輩のにやけ顔だけ。


「言って?」

「……」


「ルリちゃん?」

「……!」


名前を呼ばれると、それだけで胸がひっくり返りそうになる。

どうして、そんな声で名前を呼ぶの。

反則すぎる。


リサ先輩は許してくれるはずもなく、ひとみうるませて、私にとどめの一撃が。

「ほら、言って?」

「……っ、リサ先輩のこと……」


「うん?」

「だ、大好き……!」


勢いに押されて、つい叫んでしまった。

顔から火が出そう。

いやもう、出てるんじゃないかってくらい真っ赤になってる気がする。


「ふふっ、やっと言ってくれた。それに、アタシは、好きって言って?

 ……ってお願いしただけなのに、ちゃんと、大好き!って」

リサ先輩が、満足そうに笑う。

ほんとにもう、この人は……!


「ね、やっぱりルリちゃんってかわいい」

「~~~~~っ!!」


床に転がってバタバタしたい気持ちを、必死でこらえた。

だってここ、部室。

誰かに見られたら、死ぬ。


「じゃあ、いいわよね?」

先輩が首をかしげてのぞき込んでくる。近い。顔が近い!

心臓がズキューンて撃ち抜かれたみたいに跳ねて、思わず椅子にのけぞった。


「ちょ、ちょっと距離近いです!」

「え、近いの、イヤ?」

「いいい、イヤとかじゃなくて!!」

――それがもうダメなんだってば。好きすぎて、抗議すればするほど自滅していく。


「じゃあ決まりね?」

「決まってないです!!」

全力で突っ込んだ。即座に否定したのに、先輩は笑顔のまま。

完全に“勝ちを確信してる人の顔”。


……ずるい。

ほんと、こういうときのリサ先輩ってずるい。


私だって、もっと強く言い返したいのに。

「無理です!」ってきっぱり断りたいのに。

そのやさしい笑顔に、私の心の中のブレーキが、どんどん溶けていく。


「……う、うぅ……」

結局、口から出たのはうめき声みたいな弱音で。

情けない。私、全然頑張れてないじゃん。


「ルリちゃんってほんと、かわいい」

先輩がそう言って、また笑った。

もうそれで完全に、私の負けだった。

顔が熱くなって、視線も泳いで、言葉も出なくて。


「……は、はい……」

小さな声でうなずいてしまった。


……でも、たぶん恋ってやつはそういうものなんだ。



「私の、完敗です…リサ先輩……。」

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