第6話 訪問
ああ、どうしよう。午後、江藤さんが来ることになってしまった。とりあえず、部屋を掃除しなくちゃ。昨日、おじゃましたから、今さら断れないし。お茶を飲むだけだから。
ポーン。玄関チャイムが鳴った。
「はい。あ、江藤さん。どうぞ。」
「おじゃまします。」
江藤さんは、Tシャツに短パンという私と同じで、ラフな格好だった。リビングに入ってキョロキョロと部屋を見回す。
「とってもきれいにしてますね。整理されてるし、掃除も行き届いていますね。」
「ありがとうございます。専業主婦だから、当たり前ですけど。」
江藤さんの前にコーヒーを置いた。江藤さんは一口飲んで、
「美味しいですね。いえ、いえ、そう言ってもやることたくさんあるでしょ。昨日だって、玄関周りとかお掃除されていたし、お一人だと大変でしょ。」
「そうなんです。主人が、仕事が忙しいので、なかななか家にいないので。」
「そうなんですか。そういえば、ご主人あまりお見かけしませんね。」
「朝も早いし、夜も遅くて、休日出勤も結構あって・・・・。」
あ、なんか愚痴ってるみたいになってきた。
「大変ですし、おさびしいですね。ちょっと、手を見せてもらえますか。」
「え?手ですか?」
テーブルの上に手を出すと、
「あ、すごく荒れていますね。日中に、1人でずっといると心も荒れちゃいますよ。
ぼくが、ちょくちょく遊びに来ますよ。ゆっくり株のことも教えられるし、今日はスマホのアプリを持ってきました。」
そう言って、江藤さんは、私の隣に来て座った。
「ほら見てください。これが株の取引きアプリです。証券会社のものです。」
スマホを私に見せる。
「これなら、未可子さんでも、すぐできますよ。ほら、ここ見てください。。」
顔が近づく。あ、ちょっとまずいかも。
「あ、どこですか?」
「この銘柄の動きを、見てくださいね~。」
もう、江藤さんの言っていることが頭に入ってこない。江藤さんの腿が私の腿に触れた。
「未可子さん、手は荒れていましたけど、肌はきれいですね。」
江藤さんが、私の腿をやさしく撫でた。どうしよう。手をどけてもらわないと、でも体が動かない・・・。
ポーン!
玄関チャイムが鳴った。
「ママ~!ただいまぁ~。
あ、純也だ。帰ってきたんだ。
「息子が帰ってきたので・・・・。」
立ち上がって、玄関の鍵を開けに行く。顔を見てほっとした。
「誰か、来てるの?」
「うん。近所の江藤さん。」
「ふ~ん。こんにちわ。」
純也は、形だけのあいさつをして、訝しそうに江藤さんを見た。
「お、おじゃましました。じゃあ、また。」
江藤さんは、あたふたとリビングを出て、帰っていった。
江藤さん、本当に下心あったのかしら。こんなおばさんに。
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